暗い時間に 片山敏彦 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)剛《つよ》い [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ] ------------------------------------------------------- [#ここから改行天付き、折り返して1字下げ] 空には 燃える秋の星がある。 地には天に向つて立つけやきがある。 葉の階層――剛《つよ》い幹《みき》。年輪の多いあらい幹。 彼は、昼と夜、空間のひろがりの中で 思想である。流出である。 心に 不安がある。獣と共通な欲望がある。死を慕ふ憂欝がある。夢の記憶の破片がある。 全《すべて》の感激に立ち上つて、それに交り込み 限界の輪廓を打ち砕きたい動律と火流とがある。 どこへ行くのか? 今それを思はない。 僕は 秋の夜の、目がぐらぐらするほどな 星の無数の穴を見上げて立つ。 一つの胸が、自分にある。 [#ここで字下げ終わり] 底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社    1970(昭和45)年4月15日初版発行    1979(昭和54)年11月20日新訂版発行 入力:hitsuji 校正:染川隆俊 2022年9月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。