私生兒のこと 柳田國男 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)(郷土研究二卷一一二二頁)[#「(郷土研究二卷一一二二頁)」は1段階小さな文字] -------------------------------------------------------  ナイショウゴといふ語は、又筑前戸畑市邊でも用ゐられて居るさうである。テテナシゴは多分何處にも通ずるであらうが、秋田市でもやはりテデナシゴ、同縣横手町ではホッタワラス。ホッタ即ち私の貯財のことで、山陰各地のホリタ、フリタと同じく、新開田のホリ田から出て居り、シンガイも同じ意味で、大寶令以來の墾田私財の思想が、後終に家族の別働きの上にも及んだことを語るもので、それが更に又一轉したものと思はれる。尚栃木縣ではホマチゴ、ホマチも亦内密の貯金である。會津の河沼郡ではシラハゴ、是は白齒子であつて、前號に高木君の報ぜられた嫁が必ずお齒黒をつけた風習(郷土研究二卷一一二二頁)[#「(郷土研究二卷一一二二頁)」は1段階小さな文字]によつて説明せられる。可愛さうだよ白齒で身持ちといふ俗謠は人のよく知る所である。其他加賀でダゴノコ、日向でチョチョナンコといふ二つはまだ意味がよく分らぬ。前項堀井君所報の阿波のイキリダマと共に、注意すべき例である。因みにいふ。筑前博多では觀賞草木の自然生をテントウバナと謂つて居る。天道も自然も意味同じとすれば、鹿兒島地方の私生兒方言テントゴの起原も、さ迄深く臆測するに及ぶまい。 底本:「定本柳田國男集 第十五巻」筑摩書房    1963(昭和38)年6月25日発行 初出:「民族 三卷一號」    1927(昭和2)年11月 入力:フクポー 校正:植松健伍 2026年7月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。