ハルレム HARLEM ルイ・ベルトラン Louis Bertrand 上田敏訳 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)約《つゞ》めて |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)二重|頤《あご》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定    (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) (例)ヸ ------------------------------------------------------- [#ここから8字下げ] アムステルダムに金の雄鷄鳴けばハルレムに金の雌鷄卵を生む [#ここで字下げ終わり] [#地から3字上げ]ノストラダムス百首。  弗羅曼の畫風を約《つゞ》めて一幅漫畫にしたやうなハルレム。ヤン・ブラアケル、ペエテル・ネエフ、ダヸッド・テニイルス、パウル・レンブラントの畫によく出て來るハルレム。  堀割の水は青く搖すれ、御堂《みだう》の色硝子は金に耀き、ストゥウルといふ石造の張出に干物《ほしもの》は乾き、屋根の上には緑の唐華草《からはなさう》。  市廳の大時計のまはりに羽搏《はばたき》する鸛《こふ》の鳥は頸を中天にさし延ばして雨の水玉を喙に受けてる。  二重|頤《あご》を撫でさすつて、さも屈託無ささうな市長殿。鬱金香を見詰めつつ、戀に身の細る花賣むすめ。  マンドリイヌの爪彈に浮かれ出すジプシイをんな。ロメルポットを彈《ひ》く老人。膀胱に息を入れてる子供。  薄暗い居酒屋の中で、酒盛の一座が煙草を喫んでる。旅籠屋の女中が雉子の死んだのを窓に吊してゐる。 底本:「上田敏全訳詩集」岩波文庫、岩波書店    1962(昭和37)年12月16日第1刷発行    2010(平成22)年4月21日第38刷改版発行 初出:「芸文 六ノ三」    1915(大正4)年3月 入力:川山隆 校正:岡村和彦 2012年11月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。