サバトの門立 DEPART POUR LE SABBAT ルイ・ベルトラン Louis Bertrand 上田敏訳 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)憑《つ》かる [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定    (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) (例)ヸ 〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ (例)〔DE'PART POUR LE SABBAT〕 アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください http://www.aozora.gr.jp/accent_separation.html ------------------------------------------------------- [#ここから7字下げ] [#ここから29字詰め] 女は夜半に起きて燭を點じ泥を取つて身に塗り、さて呪文を唱ふれば、身たちどころにサバトの集會に向ふ。 [#地付き]ジァン・ボダン「方士鬼に憑《つ》かるる事」 [#ここで字詰め終わり] [#ここで字下げ終わり]  羹《あつもの》を吸ふもの十二人、各の手にある匙は亡者の前腕の骨である。  炭火は赤く爐に燃え、燭は煙つてだらだらと蝋を流し、皿の中からは春さきの溝《どぶ》のやうな臭《にほひ》が立つ。  マリバスが笑つたり、泣いたりすると、破《やれ》ヸオロンの三筋の絲を弓で扱《こ》くやうな唸《うなり》が聞える。  然し一人の兵隊はそら恐しい事だが、机の上に蝋燭を立てて魔法の書を開け廣げた。本の上には火に迷つて來た蟲が跳ねてる。  此蟲が飛び跳ねてゐる最中、毛むくじやらの脹《ふく》れた腹の處から、蜘蛛が出て來て、幻術の書の邊《へり》を這つて行く。  而も此時方士も魔女も既に煙突から飛び出してゐたのだ。或は箒木、或は火ばさみに跨り、そしてマリバスは揚鍋《あげなべ》の柄《え》に乘つて出ていつた。 底本:「上田敏全訳詩集」岩波文庫、岩波書店    1962(昭和37)年12月16日第1刷発行    2010(平成22)年4月21日第38刷改版発行 初出:「アルス 二号」    1915(大正4)年5月 ※原題「〔DE'PART POUR LE SABBAT〕」は、ファイル冒頭ではアクセント符号を略し、「DEPART POUR LE SABBAT」としました。 入力:川山隆 校正:岡村和彦 2012年11月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。