DILEMMA. 佐藤緑葉 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#5字下げ] ------------------------------------------------------- いらだたしき一夜、 群集と巡査とは睨みあい、 街燈の瓦斯の灯も常より青し。 窓硝子のやぶるる音に、 喜びて叫ぶ声、恐ろしき鬨の声、 馳せちがう民衆と警官の剣鞘のおと。 哀れにも暴君のくるしむ姿、 われもまた群集ともろ共に手を打って 幾度か「バンザイ」を叫ばんとせしが、されど…… かの家にはわが椅子あり、 わがペンもあり、 かかる時なお忘れえざるわがパンの家。 雨のごとく石はふり、 群集は狂おしく鳴りわめく、 いらだたしき銀座の一夜。 [#5字下げ](『近代思想』一九一三年三月号に発表) 底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社    1987(昭和62)年5月25日初版 初出:「近代思想 第一卷第六號」    1913(大正2)年3月1日発行 ※初出時の署名は「緑葉」です。 ※本文末の編者による注記は省略しました。 入力:坂本真一 校正:フクポー 2018年6月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。