小ねこはなにを知ったか 小川未明 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)親《おや》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)三|人《にん》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#地付き] -------------------------------------------------------  親《おや》たちは、生《い》き物《もの》を飼《か》うのは、責任《せきにん》があるから、なるだけ、犬《いぬ》やねこを飼《か》うのは、避《さ》けたいと思《おも》っていました。けれど、子供《こども》たちは、日《ひ》ごろから、犬《いぬ》でも、ねこでも、なにかひとつ飼《か》ってくださいといっていました。  ちょうど、そのころ、近所《きんじょ》でかわいらしいねこの子《こ》が産《う》まれたので、それを見《み》てきた男《おとこ》の子《こ》は、これを姉《ねえ》さんや、小《ちい》さい兄《にい》さんに話《はな》したので、三|人《にん》は熱心《ねっしん》に、お母《かあ》さんのところへいって、ねこの子《こ》をもらってきてもいいでしょうと頼《たの》んだのであります。  お母《かあ》さんは、下《した》を向《む》いて、仕事《しごと》をしながら、どう答《こた》えていいものかと、しばらく考《かんが》えていられましたが、 「お父《とう》さんがいいとおっしゃったら、飼《か》ってもいいが、おまえさんたちに、その世話《せわ》ができますか。なかなか手《て》のかかるものですよ。」と答《こた》えられました。  これを聞《き》くと、子供《こども》たちは、もしや、お母《かあ》さんに、頭《あたま》から、いけないといわれればそれまでだと思《おも》っていたのが、こうやさしくいわれると、半分《はんぶん》は、もはや、自分《じぶん》たちの願《ねが》いがかなったように思《おも》われて、三|人《にん》の顔《かお》は、にこにことして輝《かがや》きました。 「ねこの世話《せわ》なんか、できますとも。だって、あんなにかわいらしいんだもの。」と、いちばん末《すえ》の男《おとこ》の子《こ》は、叫《さけ》びました。 「お父《とう》さんに、お願《ねが》いして、いいといったら、飼《か》ってくださいね。」と、兄《あに》のほうが、いいました。 「おお、うれしい。」と、姉《あね》も、いっしょになって、喜《よろこ》びました。  三|人《にん》の姉弟《きょうだい》は、お父《とう》さんの帰《かえ》りを待《ま》っていました。そして、どうしても頼《たの》んで、それを許《ゆる》してもらわなければならないときめていました。 「三|人《にん》で、その世話《せわ》ができるなら、飼《か》ってもいいが、おまえたちにできるかね。」と、お父《とう》さんは、笑《わら》っていわれました。 「できます。」と、姉弟《きょうだい》は、答《こた》えて、とうとうかわいらしいねこの子《こ》を、近所《きんじょ》からもらってきました。  小《こ》ねこは、同《おな》じ母親《ははおや》の腹《はら》から、いっしょに生《う》まれた兄弟《きょうだい》と別《わか》れて、この家《うち》にきて、こうして、長《なが》く養《やしな》われることとなったのでありました。しかし、小《こ》ねこにとっては、それが、兄弟《きょうだい》と永久《えいきゅう》の別《わか》れであったことはわかりませんでした。三|人《にん》の姉弟《きょうだい》は珍《めずら》しがって、小《こ》ねこを下《した》に置《お》きません。小《こ》ねこもまた、みんなから別《わか》れてきたという悲《かな》しみを忘《わす》れて、はね上《あ》がったり、飛《と》びついたりして、お嬢《じょう》さんや、坊《ぼっ》ちゃんたちと遊《あそ》んだのであります。  三|人《にん》は、自分《じぶん》たちが食《た》べる前《まえ》に、小《こ》ねこにご飯《はん》を造《つく》ってやりました。こんなふうに、小《こ》ねこがこの家《うち》へきてから、にわかに、家内《かない》じゅうが陽気《ようき》になって、はや幾日《いくにち》か過《す》ぎたのであります。そのうちに、小《こ》ねこは、いつまでも子供《こども》でなかった。そして、もはや、いままでのように、はねたり、飛《と》び上《あ》がったりして遊《あそ》ばなくなりました。  ちょうど、この時分《じぶん》から、三|人《にん》は、ねこのめんどうを見《み》てやることが、だんだんうるさくなったのでした。 「姉《ねえ》さん、ねこにご飯《はん》をおやりよ。」と、弟《おとうと》がいいますと、 「あら、ずるいわ。こんどは、私《わたし》の番《ばん》ではないわ。おまえの番《ばん》じゃないの?」と、姉《ねえ》さんはいいました。  ねこは、また、ねこで、だんだん横着《おうちゃく》になってきました。鰹節《かつぶし》をたくさんかけなければ、ただ香《にお》いを嗅《か》いだばかりで食《た》べようともいたしません。そうでなければ、鰹節《かつぶし》のところばかり拾《ひろ》って、白《しろ》いご飯《はん》のところは、残《のこ》してしまいます。 「お母《かあ》さん、うちのねこは、ご飯《はん》を食《た》べませんよ。」と、子供《こども》たちはいいました。  すると、お母《かあ》さんは、仕事《しごと》をしながら、 「しんせつにしてやらないからですよ。鰹節《かつぶし》をたくさんかけてやれば、お腹《なか》がすいているのなら、食《た》べないことはありません。」といわれました。  みんなは、そうかと思《おも》いました。それで、こんどは、鰹節《かつぶし》をたくさん削《けず》って、かけてやりました。ねこは、鰹節《かつぶし》のかかっているところだけ食《た》べて、やはり、みんなは食《た》べませんでした。 「お母《かあ》さん、ねこは、鰹節《かつぶし》をたくさんかけてやっても、ご飯《はん》を食《た》べませんよ。」と、子供《こども》たちはいいました。すると、お母《かあ》さんは、 「ご飯《はん》のいれ物《もの》が汚《きたな》いからでしょう。よく洗《あら》ってやらなければ、ねこだって食《た》べませんよ。」といわれました。  三|人《にん》は、そうかと思《おも》いました。それで、こんどは、よくいれ物《もの》を洗《あら》って、ご飯《はん》をおいしく造《つく》ってやりました。けれど、ねこは、やはり、ご飯《はん》を食《た》べませんでした。  そのうちに、ねこは、生魚《なまざかな》より食《た》べないことが、みんなにわかったのでした。三|人《にん》の子供《こども》たちは、自分《じぶん》たちが、父母《ふぼ》にねこの世話《せわ》をすることを誓《ちか》って、ねこを飼《か》ったことを覚《おぼ》えているから、できるだけの世話《せわ》をしたのでした。そして、ねこがご飯《はん》を食《た》べないのは、まったく自分《じぶん》たちのせいでなく、ねこがぜいたくだからだということがわかりますと、三|人《にん》の子供《こども》たちは、ねこを憎《にく》らしく思《おも》ったことに、無理《むり》もなかったのでした。 「わたしは、もう、あんなねこに、ご飯《はん》なんかやらないわ。」と、姉《ねえ》さんがいいました。 「僕《ぼく》だって、いやだ。」と、弟《おとうと》がいいました。  すると、末《すえ》の弟《おとうと》が、二人《ふたり》の言葉《ことば》に憤慨《ふんがい》をして、 「だれもご飯《はん》をやらなければ、死《し》んじまうじゃないか? そんなら、僕《ぼく》がやるよ。」といいました。  こうして、ねこは、みんなから、きらわれるようになったのでした。  そればかりでありません。ねこは、いくらしかられても、ふすまで爪《つめ》を磨《と》いだり、障子《しょうじ》を破《やぶ》ったりすることをやめなかったのでした。そして、ときどきは、血《ち》だらけになったねずみをくわえて家《うち》へ上《あ》がってきたのです。三|人《にん》の子供《こども》たちは、いまようやく、お母《かあ》さんや、お父《とう》さんが、生《い》き物《もの》を飼《か》うことは、骨《ほね》のおれるものだといわれたことがわかったのです。 「ねこをどこかへやってしまおう。」 「だれか、もらってくれないだろうかね。」 「こんなに大《おお》きくなって、もらうものがあるものか」 「捨《す》てればいいや。」  三|人《にん》の子供《こども》たちは、こんな話《はなし》をしていました。小《こ》ねこが、この家《うち》へもらわれてきた日《ひ》のことを考《かんが》えると、三|人《にん》の話《はなし》はたいへんな相違《そうい》だったのであります。  こんな冗談《じょうだん》が、とうとうほんとうになって、ねこは、ある日《ひ》、酒屋《さかや》の小僧《こぞう》の自転車《じてんしゃ》に乗《の》せられて、家《うち》からだいぶ離《はな》れた、さびしい寺《てら》の境内《けいだい》へ捨《す》てられました。  いままで、生魚《なまざかな》でなければ食《た》べなかった、ぜいたくなねこは、ふいに、人家《じんか》もない寂《さび》しい場所《ばしょ》へ、ただ独《ひと》り置《お》かれたので、驚《おどろ》いてしまいました。しばらく、あたりを見《み》まわしていましたが、そこはどこであるか、かつて見《み》たことのないところで、見当《けんとう》がつきませんでした。ねこは、急《きゅう》に、悲《かな》しくなったのです。そしてなにとは知《し》らず、体《からだ》がぶるぶると震《ふる》えてきました。  夜《よる》の空《そら》を渡《わた》る風《かぜ》が、林《はやし》に当《あ》たって、怖《おそ》ろしい音《おと》をたてていました。人間《にんげん》の姿《すがた》も見《み》えなければ、なつかしい家《うち》の燈火《あかり》ももれてきませんでした。ねこは、心細《こころぼそ》くなって、悲《かな》しい声《こえ》をあげて泣《な》きながら歩《ある》きました。  どこへいっても、暗《くら》い林《はやし》がとり巻《ま》いている。そして、自分《じぶん》の泣《な》く声《こえ》は、空《むな》しく、しんとした夜《よる》の世界《せかい》へ吸《す》い取《と》られてしまいました。いつしか、その声《こえ》もかれてしまった。だんだん腹《はら》は空《す》いてきた。ねこは、かつて、こんな悲《かな》しいめ、苦《くる》しいめに出《で》あったことはなかった。いままでは、空腹《くうふく》ということを知《し》らず、お嬢《じょう》さんや、坊《ぼっ》ちゃんたちにかわいがられていたことを考《かんが》えると、それは、どんなに幸福《こうふく》なことであったろうか。  ようやくのことで、ねこは、狭《せま》い道《みち》の上《うえ》へ出《で》ました。その道《みち》は、どこから、どこへつづいているのかわからなかった。ねこは、しばらくそばの垣根《かきね》の下《した》にすくんで、なにか、聞《き》きなれた物音《ものおと》でも耳《みみ》にはいらないかと考《かんが》え込《こ》んでいました。  ちょうど、このとき、目《め》の前《まえ》を白《しろ》い犬《いぬ》が、うつむきながら通《とお》りかかった。ねこは、それを見《み》ると、はっとして驚《おどろ》いた。しかし、瞬間《しゅんかん》に、その犬《いぬ》は、よく自分《じぶん》の家《うち》の勝手《かって》もとへきて、自分《じぶん》におどかされて逃《に》げていった犬《いぬ》だということを知《し》りましたから、ねこは、つい声《こえ》をかけてみる気《き》になったのでした。 「もし、もし。私《わたし》ですよ。どういったら、家《うち》へ帰《かえ》れるか教《おし》えてくださいませんか。」と、ねこはいいました。  白《しろ》い犬《いぬ》は、振《ふ》り向《む》いて、近寄《ちかよ》ってきました。 「あなたでしたか……。どうして、こんなところへきたのです……。」 「私《わたし》は、捨《す》てられたのです。」と、ねこは、正直《しょうじき》に答《こた》えました。  すると、犬《いぬ》は、軽《かる》いため息《いき》をつきました。 「やはり、あなたにも、そういう運命《うんめい》がめぐってきたんですか。あなたは、いばっていましたね。私《わたし》が、お腹《なか》が減《へ》って、なにか、あなたの食《た》べ残《のこ》しにでもありつこうと思《おも》って、勝手《かって》もとへ顔《かお》を出《だ》すと、あなたは、飛《と》びつきそうな、怖《おそ》ろしい剣幕《けんまく》をして、威《おど》されたことを忘《わす》れはなさらないでしょうね。」と、犬《いぬ》は、ねこに向《む》かって、いいました。  ねこは、こういわれると、さすがに気恥《きは》ずかしかった。 「ほんとうに、私《わたし》が、悪《わる》かったのです。いま自分《じぶん》が、こうした境遇《きょうぐう》になって、空腹《くうふく》を感《かん》じていますと、よく、あのときのあなたに同情《どうじょう》ができるのです。もし、もう一|度《ど》、私《わたし》が、家《うち》へ帰《かえ》ることができたなら、この後《のち》、あなたに対《たい》して、あのような冷酷《れいこく》なことは、けっしていたしません……。」といった。  白《しろ》い犬《いぬ》は、黙《だま》っていました。 「あなたは、いつから、家《いえ》がないのですか?」と、ねこは、たずねました。 「私《わたし》は、家《いえ》を失《なく》してから、もう三|年《ねん》になります。私《わたし》の主人《しゅじん》たちは、私《わたし》を捨《す》ててどこへか移《うつ》ってゆきました。私《わたし》は、その当座《とうざ》どんなにか、泣《な》きましたか。いまは、こうした宿無《やどな》しの生活《せいかつ》に慣《な》れてしまったが……。しかし、あなたは、捨《す》てられたのですから、たとえ帰《かえ》っても、家《うち》へは、いれてくれますまい。」と、犬《いぬ》は答《こた》えました。  ねこは、頼《たよ》りなさと、悲《かな》しさと、空腹《くうふく》の苦痛《くつう》に、ふたたび体《からだ》を震《ふる》わしたのです。 「いれられなくてもいいから、どうか、もう一|度《ど》、私《わたし》を、家《うち》の方《ほう》へつれていってください。そして万《まん》に一つ、私《わたし》が、家《うち》に飼《か》われたら、きっと、そのときは、あなたに、ご恩《おん》を返《かえ》しますから……。」と、頼《たの》んだのでした。  ちょうど、このとき、三|人《にん》の子供《こども》たちは、家《うち》で話《はなし》をしていました。 「ねこは、いまごろどうしたろうね。」 「きっと家《うち》へ帰《かえ》れなくて、うろうろしているだろう。かわいそうだな。」 「そんなら、捨《す》てなければいいに……。」と、最後《さいご》に、姉《ねえ》さんはいいました。 「僕《ぼく》が捨《す》てるといったのでない。姉《ねえ》さんが、あんなねこ、捨《す》ててしまえといったのでないか?」と、上《うえ》の弟《おとうと》は、怒《おこ》りました。  こんなことで、三|人《にん》の子供《こども》たちがいい争《あらそ》っていると、そばで、これを聞《き》いていた、お母《かあ》さんは、 「もし、今晩《こんばん》にでも、ねこが帰《かえ》ってきたら、三|人《にん》は、かわいそうだから、よくめんどうをみてやるんですよ。」といわれました。 「こんど帰《かえ》ってきたら、お母《かあ》さん、僕《ぼく》一人《ひとり》でみてやる。」と、末《すえ》の弟《おとうと》が、答《こた》えました。 「それは、もう捨《す》てられはしないわ。」 「ほんとうに、かわいがってやろうね。」  三|人《にん》は、そういって、昨日《きのう》とは変《か》わって、どうかして、ねこが帰《かえ》ってきてくれればいいと心《こころ》に願《ねが》ったのでした。  その夜《よ》は、ついに、ねこは帰《かえ》ってきませんでした。そして、二日《ふつか》めの晩《ばん》に、勝手《かって》もとで、ねこの泣《な》く声《こえ》がしたのであります。 「あっ! ねこが帰《かえ》ってきた!」といって、三|人《にん》は、飛《と》び出《だ》しました。  子供《こども》たちは、争《あらそ》うようにして、ねこを抱《だ》き上《あ》げたのでした。 「よく、おまえは帰《かえ》ってきたな。」 「感心《かんしん》だわね」  末《すえ》の弟《おとうと》はねこの体《からだ》にほおずりしました。 「腹《はら》が空《す》いているだろう……。」  ねこは、しきりに、泣《な》いて、空腹《くうふく》を訴《うった》えていましたから、上《うえ》の弟《おとうと》は、鰹節《かつぶし》を削《けず》ってご飯《はん》をやりました。ねこは、飛《と》びつくように、喜《よろこ》んで咽喉《のど》を鳴《な》らして食《た》べました。 「お母《かあ》さん、ねこは、鰹節《かつぶし》のご飯《はん》を喜《よろこ》んで食《た》べますよ。」と、子供《こども》たちは、告《つ》げました。  すると、お母《かあ》さんは、 「これから、生魚《なまざかな》をあまりやらないようにして、なんでも食《た》べる癖《くせ》をつけなければいけません。あまりわがままにすると、ねこだって、いけなくなってしまいます。」と、いわれたのです。  それから、四、五|日《にち》すると、白《しろ》い犬《いぬ》が、勝手《かって》もとへ顔《かお》を出《だ》しました。以前《いぜん》だったら、ねこは、背《せ》を丸《まる》くして怒《おこ》りますのですが、そのときは、やさしい声《こえ》で泣《な》いていました。白《しろ》い犬《いぬ》は、最初《さいしょ》、遠慮《えんりょ》するように見《み》えましたが、ねこの茶《ちゃ》わんへ進《すす》み寄《よ》って、余《あま》りのご飯《はん》をきれいに食《た》べてしまいました。そして、いってしまったのです。  この後《のち》、幾《いく》たびとなく、白《しろ》い犬《いぬ》はやってきました。そして、ねこのご飯《はん》を食《た》べていくのを例《れい》としました。  一|度《ど》捨《す》てられて、苦《くる》しみを経験《けいけん》したねこは、そのときの怖《おそ》ろしさと、頼《たよ》りなさと、空腹《くうふく》のつらさと、悲《かな》しさとをいつまでも忘《わす》れることができなかった。そして、それを思《おも》うたびに、白《しろ》い犬《いぬ》と約束《やくそく》したことを果《は》たそうとしたのでした。  一|日《にち》、白《しろ》い犬《いぬ》がきて、ねこのご飯《はん》を食《た》べていました。それを子供《こども》たちは見《み》つけました。白《しろ》い犬《いぬ》は、すぐに物蔭《ものかげ》に隠《かく》れてしまったが、子供《こども》たちは、ねこを捕《と》らえて、 「おまえはばかだね。自分《じぶん》のご飯《はん》を食《た》べられて、じっと見《み》ている奴《やつ》があるかい。」 といって、ねこの頭《あたま》をポン、ポン、と打《う》ちました。  これを知《し》った、白《しろ》い犬《いぬ》は、ねこを気《き》の毒《どく》に思《おも》いました。  それから、白《しろ》い犬《いぬ》は、この家《いえ》の勝手《かって》もとへ影《かげ》を見《み》せなかったのであります。 [#地付き]――一九二七・一〇作―― 底本:「定本小川未明童話全集 5」講談社    1977(昭和52)年3月10日第1刷 初出:「少女倶楽部」    1928(昭和3)年1月 ※表題は底本では、「小《こ》ねこはなにを知《し》ったか」となっています。 ※初出時の表題は「小猫は何を知つたか」です。 入力:特定非営利活動法人はるかぜ 校正:江村秀之 2014年2月14日作成 2014年5月23日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。