南方物語 小川未明 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)北《きた》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)三|人《にん》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#7字下げ] ------------------------------------------------------- [#7字下げ]一[#「一」は中見出し]  北《きた》の方《ほう》の町《まち》では、つばめが家《いえ》の中《なか》に巣《す》をつくることをいいことにしています。いつのころからともなく、つばめは、町《まち》の人々《ひとびと》をおそれなくなりました。このりこうな鳥《とり》は、どの家《いえ》が、朝早《あさはや》く起《お》きて、戸《と》を開《あ》けるか、またどの家《いえ》には、どんな性質《せいしつ》の人《ひと》が住《す》んでいるか、また、この家《いえ》は、規律《きりつ》正《ただ》しいかどうかということを、よく見《み》ぬいていました。それでなければ、安心《あんしん》して、家《いえ》の中《なか》に、巣《す》はつくれなかったからです。また、大事《だいじ》な自分《じぶん》たちの子《こ》どもをも育《そだ》てられなかったからです。  つばめのいいと思《おも》った家《いえ》は、ほんとうにいい家《いえ》であったから、巣《す》をつくるのは、無理《むり》もなかったのでしたが、もう一つこれには、町《まち》の人《ひと》が、なぜこんなにつばめを愛《あい》するかという話《はなし》があります。  それは、昔《むかし》のことでした。この海岸《かいがん》に近《ちか》い町《まち》の人々《ひとびと》は、船《ふね》に乗《の》って、沖《おき》へ出《で》て漁《りょう》をしていました。  ある日《ひ》のこと、幾《いく》そうかの船《ふね》は、いつものごとく青《あお》い波間《なみま》に浮《う》かんで、漁《りょう》をしていたのです。すると、天気《てんき》がにわかにかわって、ひどい暴風《ぼうふう》となりました。いままで静《しず》かであった海原《うなばら》は、さながら、白《しろ》くにえかえるようになり、風《かぜ》は、吹《ふ》きに吹《ふ》きすさみました。たちまち、幾《いく》そうかの船《ふね》は、くつがえってしまった。そして、その中《なか》の、ただ一そうの船《ふね》は、遠《とお》く遠《とお》く沖《おき》の方《ほう》へ吹《ふ》き流《なが》されてしまったのです。  暴風《ぼうふう》がやんだときに、この一そうの船《ふね》は、まったくひろびろとした海《うみ》の上《うえ》に、あてもなく、ただよっていました。どちらが北《きた》であり、どちらが南《みなみ》であるかさえわからなかった。  この船《ふね》に乗《の》っている三|人《にん》のものは、たがいに顔《かお》を見合《みあ》って、ため息《いき》をつきました。生《せい》も、死《し》も、運命《うんめい》にまかせるよりほかに、みちがなかったからです。  ふしぎに船《ふね》は、くつがえりもせず、波《なみ》にゆられて風《かぜ》のまにまに、すでに幾日《いくにち》となく海《うみ》の上《うえ》をただよっていました。三|人《にん》は、つねに、こうしたときの用意《ようい》にしまっておいたかつお節《ぶし》や、こんぶなどをとり出《だ》して、わずかに飢《う》えをしのいだのでした。  今日《きょう》は、船《ふね》に出《で》あわないか、明日《あす》になったら、どこかの浜《はま》に着《つ》かないかと、空《むな》しい望《のぞ》みを抱《いだ》いて、ただ、海《うみ》から上《のぼ》った太陽《たいよう》をながめ、やがて、赤《あか》く沈《しず》んでゆく太陽《たいよう》を見送《みおく》ったのです。 「どうかして、すくわれたいものだな。」  ひとたびは、死《し》を覚悟《かくご》したものが、こうして毎日《まいにち》、おだやかな海《うみ》を見《み》るうちに、どうかして生《い》きたいという希望《きぼう》に燃《も》えたのでした。  のろわしい風《かぜ》も、いまは、やさしく彼《かれ》らの耳《みみ》にささやき、ほおを吹《ふ》いたのであります。船《ふね》は、あてもなくただよって、ただ、風《かぜ》がつれていってくれるところへ着《つ》かなければなりませんでした。  海《うみ》の上《うえ》に、うすく霧《きり》がかかって、一|日《にち》は、むなしく暮《く》れてゆく時分《じぶん》でした。あちらに、赤《あか》い火影《ほかげ》をみとめたのです。 「火《ひ》だ、火《ひ》だ。」  三|人《にん》は、じっと、それをながめました。急《きゅう》に、元気《げんき》がわいて、かじを取《と》って、その方《ほう》へいっしょうけんめいに船《ふね》を進《すす》めるのでした。火《ひ》は、だんだん近《ちか》くなりました。小《ちい》さな燈台《とうだい》のようでした。 「いったい、ここはどこだろう。」  夜《よる》の空《そら》をすかして見《み》ると、熱帯植物《ねったいしょくぶつ》がこんもりと立《た》っていました。そこは、大洋《たいよう》の真《ま》ん中《なか》にあった、小《ちい》さな島《しま》であることがわかったのでした。 「なんだか、夢《ゆめ》のようだな。」と、一人《ひとり》がいいました。 「幽霊島《ゆうれいとう》でないかしらん。」 「どこでもかまったことはない。なるほど、このあたりは、岩《いわ》が多《おお》いようだ。沖《おき》へ出《で》ている船《ふね》もいるとみえて、あの赤《あか》い火《ひ》がついているのだろう。」と、もう一人《ひとり》がいいました。  三|人《にん》は、いつまでもこうしていては、助《たす》からないと思《おも》いましたから、命《いのち》がけの冒険《ぼうけん》をする気《き》で、十|分《ぶん》注意《ちゅうい》しながら、岩《いわ》と岩《いわ》の間《あいだ》をこいで、その島《しま》に上陸《じょうりく》しました。  屋根《やね》の低《ひく》い家《いえ》が、ところどころにありました。葉《は》の大《おお》きな植物《しょくぶつ》が、こんもりとして、海《うみ》の方《ほう》から吹《ふ》いてくる風《かぜ》に、うちわをふるように、はたはたと夜空《よぞら》に音《おと》をたてています。そして、どこからともなく、らんの花《はな》のいい香《かお》りが流《なが》れてきました。  三|人《にん》は、知《し》らない島《しま》に上《あ》がりました。不安《ふあん》な心《こころ》をおさえながら、一|軒《けん》の家《いえ》の窓《まど》に近寄《ちかよ》ってのぞいてみますと、髪《かみ》の長《なが》、美《うつく》しい目《め》をした少女《しょうじょ》が、両《りょう》はだをぬいで、下《した》を向《む》いて貝《かい》をみがいていました。  人種《じんしゅ》こそちがっているけれど、けっしてこの島《しま》の人《ひと》は、わるい人《ひと》たちでないとわかると、三|人《にん》はやっと安心《あんしん》をして、島《しま》の中《なか》をぐるぐると歩《ある》きはじめたのです。そのうちに、島《しま》の人《ひと》たちは、三|人《にん》を見《み》つけて、めずらしそうに、まわりに集《あつ》まってきました。  もとより言葉《ことば》は、たがいにわからなかったけれど、手《て》まねで、やっと三|人《にん》が、遠《とお》い北《きた》の方《ほう》から、暴風《ぼうふう》のために、幾日《いくにち》も漂流《ひょうりゅう》して、この島《しま》に着《つ》いたことがわかったのでした。  三|人《にん》は、数日間《すうじつかん》というもの、島《しま》の人《ひと》たちに、いろいろともてなされました。その間《あいだ》に、疲《つか》れたからだを休《やす》めて、勇気《ゆうき》をとりもどすことができたので、ふたたび、遠《とお》い故郷《こきょう》をさして帰《かえ》ることにしました。  島《しま》の人《ひと》たちは、三|人《にん》の船《ふね》をなおして、新《あたら》しい帆《ほ》を張《は》ってくれたばかりでなく、食物《しょくもつ》や、また、水《みず》などの用意《ようい》もしてくれたのです。美《うつく》しい娘《むすめ》たちは、自分《じぶん》たちが、貝《かい》でつくったボタンを二つずつ三|人《にん》に、わけてくれました。そして、無事《ぶじ》に、故郷《こきょう》へ着《つ》くようにと祈《いの》ってくれました。言葉《ことば》はわからなかったけれど、人情《にんじょう》にかわりはありませんでした。島《しま》の人《ひと》たちのまごころは、三|人《にん》の胸《むね》に通《つう》じて、永久《えいきゅう》に忘《わす》れられないものでした。また三|人《にん》の心《こころ》からの感謝《かんしゃ》は、島《しま》の人《ひと》たちにとどいて、彼《かれ》らが船《ふね》に乗《の》って別《わか》れるときには、娘《むすめ》たちは、涙《なみだ》を流《なが》して見送《みおく》っていたのであります。 [#7字下げ]二[#「二」は中見出し]  北方人《ほっぽうじん》の目《め》には、島《しま》の景色《けしき》が、いつまでも残《のこ》っていました。また、つばめが、たくさんこの島《しま》にすんでいたこと、島《しま》の人《ひと》たちが、みずから、その島《しま》をつばめの島《しま》といっていたことも忘《わす》れることができませんでした。  こうして、三|人《にん》の乗《の》った船《ふね》は、かぎりない、青《あお》い海《うみ》に吸《す》いこまれるごとく、あてもなくただよいはじめたのです。島《しま》の人々《ひとびと》が、どちらに太陽《たいよう》を見《み》てゆくときは、どの方向《ほうこう》へゆくということを教《おし》えてくれたので、それをただ一つのたよりとしました。  しかし、北《きた》へ帰《かえ》る旅《たび》も、無事《ぶじ》ではありませんでした。一|片《ぺん》の木《こ》の葉《は》にもひとしい、たよりない船《ふね》は、ある日《ひ》、また風《かぜ》のために吹《ふ》き流《なが》されて、知《し》らぬ他国《たこく》の岸《きし》に着《つ》けられたのでした。そして、その国《くに》の人《ひと》たちは、島《しま》の人々《ひとびと》のように、しんせつではありませんでした。三|人《にん》は、さっそく金《かね》に困《こま》ったのでした。身《み》につけているもので、売《う》って金目《かねめ》になるようなものはなにもありません。このとき、一人《ひとり》は、島《しま》の娘《むすめ》からもらったボタンに気《き》がつきました。 「おい、兄弟《きょうだい》、なんともいえないきれいなボタンだが、これは金《かね》にならないものだろうか。」  こういうと、二人《ふたり》は、頭《あたま》をかしげました。 「そうだな、たいした金《かね》にもなるまいが、ひとつ見《み》せてみようか。」といいました。  それから、町《まち》を歩《ある》きまわって、いろいろめずらしいものを売《う》る店《みせ》にはいって、そのボタンを見《み》せたのです。すると、主人《しゅじん》らしい男《おとこ》が、その六|個《こ》のボタンを手《て》にとって、じっとながめていましたが、 「いくらで売《う》るか。」といって聞《き》きました。  三|人《にん》は、自分《じぶん》たちは、風《かぜ》に流《なが》されて、こんなに遠《とお》くきたことを話《はな》しました。それで、故郷《こきょう》に帰《かえ》る旅費《りょひ》にでもなればいいということを――心《こころ》のうちでは、そんなになるとは思《おも》わなかったけれど――いったのでありました。 「いくら、お入《い》り用《よう》か知《し》らないが、精《せい》いっぱいにいただいて、金貨《きんか》五つとならお換《か》えいたします。」と、主人《しゅじん》はいいました。  彼《かれ》らは、ほんとうに、思《おも》いもよらぬ金《かね》になったとよろこびました。それで、ボタンを売《う》って、自分《じぶん》たちの故郷《こきょう》をさして旅立《たびだ》ったのであります。それからまた幾日《いくにち》かのあいだ苦《くる》しみました。そして、ついに彼《かれ》らは、なつかしい故郷《こきょう》に帰《かえ》って、兄弟《きょうだい》や、親《おや》たちの顔《かお》を見《み》ることができたのでした。 「あのボタンは、なんだったろう。」  三|人《にん》は、いまから考《かんが》えると、あれが、普通《ふつう》の貝《かい》ではなかったような気《き》がしました。そして、あの島《しま》のことを思《おも》うと、まったく、夢《ゆめ》のような、ふしぎな気《き》がします。美《うつく》しい娘《むすめ》たちも、しんせつな島《しま》の人《ひと》たちも、木立《こだち》も、あの赤《あか》い燈台《とうだい》の火《ひ》も……。 「もう一|度《ど》、あの島《しま》へいってみたいな。」  三|人《にん》は、顔《かお》を見《み》ると、そのときのことを語《かた》りあって、遠《とお》い南《みなみ》の海《うみ》を空想《くうそう》しました。そして、春《はる》になって、つばめが飛《と》んできたとき、 「あの島《しま》からきたのだ。つばめの島《しま》からきたのだ。」といって、このりこうな鳥《とり》を歓迎《かんげい》しました。  町《まち》の人《ひと》たちは、三|人《にん》から、つばめの島《しま》の話《はなし》を聞《き》いて、そんな、いいところが、この世界《せかい》のどこかにあるのかと思《おも》いました。 「つばめは、幸福《こうふく》を持《も》ってきたのだ。」といって、どこの家《いえ》でも、自分《じぶん》の家《いえ》のなかに巣《す》をつくってくれるようにと望《のぞ》んだのです。こうして、いつということなしに、つばめは北方《ほっぽう》へ飛《と》んでいけば、人間《にんげん》は自分《じぶん》たちを保護《ほご》してくれるものでこそあれ、けっして害《がい》を加《くわ》えるものでないことを知《し》ったのであります。  夏《なつ》のおわりになると、つばめは、北《きた》から南《みなみ》へと、紫色《むらさきいろ》のつばさをひろげて、帰《かえ》ってゆきました。  冬《ふゆ》のない南方《なんぽう》は、まだ真夏《まなつ》であります。湖《みずうみ》の水《みず》は、銀《ぎん》のごとく、日《ひ》の光《ひかり》を反射《はんしゃ》していました。片方《かたほう》は、高《たか》いがけになって、ちょうど切《き》り落《お》とされたように、赤《あか》い地《じ》はだを静《しず》かな水《みず》の面《おもて》にうつしていました。  そのがけの半腹《はんぷく》に、円《まる》いあなをうがって、一家族《ひとかぞく》のつばめは、巣《す》をつくりました。そして、子《こ》どもを、あなの中《なか》に産《う》みそだてていました。  ある日《ひ》、親《おや》つばめは、そのあなの中《なか》から出《で》て、湖水《こすい》の上《うえ》を矢《や》のようにかけてゆきました。ちょうど、そのとき、あのしげみに、一|羽《わ》のかわせみが、しょんぼりとしてたたずんでいたが、頭《あたま》の上《うえ》を通《とお》りかかるつばめを見《み》ると、急《きゅう》に声《こえ》をかけて、呼《よ》び止《と》めました。  つばめは、何事《なにごと》かと思《おも》って、舞《ま》い下《お》りると、一|本《ぽん》の強《つよ》そうなあしに止《と》まったのであります。 「どうなさったのですか。」と、快活《かいかつ》に、つばめはたずねました。 「弟《おとうと》はどうしたのでしょう、まだ帰《かえ》ってこないのですが、あなたは、ごらんになりませんでしたか。」と、かわせみは、心配《しんぱい》そうに聞《き》いたのであります。  つばめは、いまそのことを思《おも》い出《だ》したように、うなずきながら、 「それは、高《たか》い山《やま》に、いつも雪《ゆき》のある北《きた》の国《くに》の町《まち》でした。ある日《ひ》、私《わたし》は飛《と》んでいますと、一|軒《けん》の薬屋《くすりや》のガラス戸《ど》のはまった店《みせ》さきに、めずらしい鳥《とり》のはくせいがありました。私《わたし》は、見《み》おぼえのあるような気《き》がしたが、そのときは、急《いそ》いでいましたので、よくそれを見《み》ませんでしたが、あれは、あなたの弟《おとうと》さんではなかったようです。きっと、そのうちに、帰《かえ》っておいでになりますよ。」と、なぐさめるようにいいました。  かわせみは、うらやましそうに、つばめを見上《みあ》げながら、 「あなたたちは、どこへいっても、人間《にんげん》にかわいがられて、おしあわせですこと。」と、感嘆《かんたん》いたしました。  つばめは、それを打《う》ち消《け》すように、羽《は》ばたきをして、おしゃべりをはじめました。 「北《きた》の国《くに》では、そうでありましても、こちらへきては、なかなか油断《ゆだん》がなりません。へびが子《こ》どもをねらっていますから。」と答《こた》えました。  かわせみは、すばしこく水《みず》の上《うえ》をいったり、きたりしながら、 「こんどの巣《す》は、なかなか安心《あんしん》な場所《ばしょ》じゃありませんか。それに、巣《す》のまわりの木《き》の枝《えだ》には、毛虫《けむし》がたくさんついていますから、そんなに遠《とお》くまでいって餌《えさ》をおさがしなさらなくてもいいかと思《おも》います。」 「かわせみさん、そこが、私《わたし》の用心深《ようじんぶか》いところなんですよ。だれもすぐあなのまわりに、私《わたし》たちの好《す》きな食物《しょくもつ》があると思《おも》うでしょう。私《わたし》が、それを捕《と》らないのは、巣《す》のあり場《ば》をかくすためです。こういう秘密《ひみつ》も、仲《なか》のいいあなたにだけお教《おし》えするのですよ。」と、つばめは、さも、じまんそうにいいました。そして、立《た》ち去《さ》ったのであります。  あなにいた子《こ》つばめは、母《はは》つばめの後《あと》をしたいました。もう、目《め》はあいていたから、チイ、チイと鳴《な》いて、あなの入《い》り口《ぐち》まではい出《で》て、お母《かあ》さんの許《ゆる》しなしに、赤《あか》いほおを出《だ》して外《そと》の世界《せかい》をのぞいたのです。  きらきらとした、美《うつく》しい水《みず》が、目《め》の下《した》にあふれていました。そして、すぐあなの前《まえ》へ差《さ》し出《で》た青《あお》い葉《は》のついている枝《えだ》に、自分《じぶん》たちの好《す》きな、いつも母親《ははおや》が、どこか遠方《えんぽう》から持《も》ってきてくれるのと同《おな》じい毛虫《けむし》が、うようよとして動《うご》いているのを見《み》ました。 「これは、どうしたというのだろう? お母《かあ》さんはこれを知《し》らないのか?」  子《こ》つばめたちは、首《くび》をのばして、あらそってそれをとろうとしました。そして、つぎの瞬間《しゅんかん》に、みんな湖水《こすい》の中《なか》に落《お》ちておぼれてしまいました。  親《おや》つばめは、まだそれを知《し》りませんでした。  りこうで、幸福《こうふく》な鳥《とり》として知《し》られているつばめらも、南《みなみ》の方《ほう》に帰《かえ》ると、こうした思《おも》わぬわざわいにかかることもあったのです。 底本:「定本小川未明童話全集 6」講談社    1977(昭和52)年4月10日第1刷 底本の親本:「未明童話集4」丸善    1930(昭和5)年7月20日 初出:「赤い鳥」    1928(昭和3)年9月 ※表題は底本では、「南方物語《なんぽうものがたり》」となっています。 入力:特定非営利活動法人はるかぜ 校正:へくしん 2022年1月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。