酒場にて(定稿) 中原中也 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)近代《いま》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定    (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) (例)Ⅱ ------------------------------------------------------- 今晩あゝして元気に語り合つてゐる人々も、 実は、元気ではないのです。 近代《いま》といふ今は尠くも、 あんな具合な元気さで ゐられる時代《とき》ではないのです。 諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。 しかし、そんな定規みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。 ほがらかとは、恐らくは、 悲しい時には悲しいだけ 悲しんでられることでせう? されば今晩かなしげに、かうして沈んでゐる僕が、 輝き出でる時もある。 さて、輝き出でるや、諸君は云ひます、 「あれでああなのかねえ、 不思議みたいなもんだねえ」。 が、冗談ぢやない、 僕は僕が輝けるやうに生きてゐた。 [#地付き](一九三六・一〇・一) 底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩Ⅱ」角川書店    2001(平成13)年4月30日初版発行 ※底本のテキストは、著者自筆稿によります。 ※()内の編者によるルビは省略しました。 入力:きりんの手紙 校正:hitsuji 2021年3月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。