我が祈り 小林秀雄に 中原中也 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)奸策《かんさく》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#地から4字上げ] ------------------------------------------------------- 神よ、私は俗人の奸策《かんさく》ともない奸策が いかに細き糸目もて編みなされるかを知つてをります。 神よ、しかしそれがよく編みなされてゐればゐる程、 破れる時には却《かへつ》て速かに乱離することを知つてをります。 神よ、私は人の世の事象が いかに微細に織られるかを心理的にも知つてをります。 しかし私はそれらのことを、 一も知らないかの如く生きてをります。 私は此所に立つてをります!…… 私はもはや歌はうとも叫ばうとも 描かうとも説明しようとも致しません! しかし、噫《ああ》! やがてお恵みが下ります時には、 やさしくうつくしい夜の歌と 櫂歌《かいうた》とをうたはうと思つてをります…… [#地から4字上げ](一九二九・一二・一二) 底本:「中原中也詩集」角川文庫、角川書店    1968(昭和43)年12月10日改版初版発行    1973(昭和48)年8月30日改版13版発行 初出:「白痴群 第五號」東省堂    1930(昭和5)年1月1日発行 入力:ゆうき 校正:きりんの手紙 2019年3月29日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。