酒場にて 中原中也 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)近代《いま》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#地から4字上げ] ------------------------------------------------------- 今晩あゝして元気に語り合つてゐる人々も、 実は、元気ではないのです。 近代《いま》といふ今は尠《すくな》くも、 あんな具合な元気さで ゐられる時代《とき》ではないのです。 諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。 しかし、そんな定規《ぢやうぎ》みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。 ほがらかとは、恐らくは、 悲しい時には悲しいだけ 悲しんでられることでせう? されば今晩かなしげに、かうして沈んでいる僕が、 輝き出でる時もある。 さて、輝き出でるや、諸君は云ひます、 「あれでああなのかねえ、 不思議みたいなもんだねえ」 が、冗談ぢやない、 僕は僕が輝けるやうに生きてゐた。 [#地から4字上げ](一九三六・一〇・一) 底本:「中原中也詩集」角川文庫、角川書店    1968(昭和43)年12月10日改版初版発行    1973(昭和48)年8月30日改版13版発行 入力:ゆうき 校正:木浦 2013年1月23日作成 2018年12月27日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。