木と鳥になった姉妹 小川未明 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)人《ひと》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)一|生《しょう》 -------------------------------------------------------  あるところに、人《ひと》のよいおばあさんが住《す》んでいました。このおばあさんはいろいろな話《はなし》を知《し》っていました。怖《おそ》ろしいような話《はなし》も、不思議《ふしぎ》な話《はなし》も、またおかしいような話《はなし》なども知《し》っていました。この話《はなし》は、やはりそのおばあさんが聞《き》かせてくれたのであります。  昔《むかし》、昔《むかし》、あるところに、仲《なか》のいい姉《あね》と妹《いもうと》とがありました。姉《あね》はよく妹《いもうと》をかわいがり、妹《いもうと》はまたよく姉《あね》を慕《した》いました。  姉《あね》は、気質《きだて》のきわめてやさしい人柄《ひとがら》でありまして、すぐに涙《なみだ》ぐむというほうでありましたけれど、あまり顔《かお》が美《うつく》しくありませんでした。妹《いもうと》のほうは、やはり、やさしいにはやさしかったけれど、姉《あね》にくらべると、快活《かいかつ》なほうでありました。そして、目《め》は鈴《すず》を張《は》ったように美《うつく》しく、唇《くちびる》の色《いろ》はとこなつの花《はな》のように紅《あか》く、髪《かみ》は黒《くろ》く長《なが》く肩《かた》へ垂《た》れて、まれに見《み》るような美《うつく》しさでありました。  二人《ふたり》は、だんだん年《とし》をとるにつれて、河辺《かわべ》を歩《ある》いているときも、水《みず》に映《うつ》った自分《じぶん》の姿《すがた》に気《き》をとめてながめるようになりました。  ある日《ひ》のこと、二人《ふたり》は、小川《おがわ》にそうて散歩《さんぽ》をしていました。川《かわ》の辺《ほとり》には、白《しろ》い花《はな》や、桃色《ももいろ》の花《はな》が咲《さ》いていました。そのとき、姉《あね》は水《みず》に映《うつ》った自分《じぶん》の姿《すがた》をながめて、顔《かお》を赤《あか》くしながら、 「なんというおまえは、美《うつく》しくこの世《よ》に生《う》まれておいでだろう。それにひきかえて、私《わたし》は、なんという醜《みにく》い姿《すがた》で、生《う》まれてきたでしょう。私《わたし》は、だれをもうらみません。これもきっと、この前《まえ》の世《よ》で、おまえはよいことをたくさんなさったので、それで神《かみ》さまが、そんな美《うつく》しい姿《すがた》にしてくだされたのです。私《わたし》は、覚《おぼ》えのあろうはずがないけれど、なにか罪《つみ》を犯《おか》したので、それで神《かみ》さまは、この世《よ》へこんなに醜《みにく》く生《う》まれさせられたのです。」と、姉《あね》はいいました。  これを聞《き》くと、妹《いもうと》は、目《め》をみはってびっくりして、 「姉《ねえ》さん、なにをおいいなさるのですか。人間《にんげん》は、顔《かお》や、形《かたち》よりも、魂《たましい》が大事《だいじ》なのです。魂《たましい》の美《うつく》しいほうが、どれほど、貴《とうと》いかわかりません。姉《ねえ》さんのように、やさしいしんせつな、親孝行《おやこうこう》な人《ひと》がたくさんありましょうか。あなたのお心《こころ》は、あの空《そら》の星《ほし》よりも、きれいで輝《かがや》かしくあります。いま、姉《ねえ》さんのおっしゃったように、また人間《にんげん》が、今度《こんど》の世《よ》に生《う》まれてくるものなら、姉《ねえ》さんは、この世界《せかい》じゅうでなにものよりも、美《うつく》しく、めぐみ深《ふか》く、またみんなから愛《あい》せられ、慕《した》われるものになられるでありましょう。」と、妹《いもうと》はいいました。  すると、姉《あね》は、この言葉《ことば》を聞《き》いているうちに、いつしか涙《なみだ》ぐんでしまいました。 「いえいえ、もうおたがいに、今度《こんど》の世《よ》のことなどはいいますまい。ただ、私《わたし》はいつまでもおまえと仲《なか》よく、こうして暮《く》らしたいと思《おも》うのですけれど、それがかなわないような気《き》がして悲《かな》しいのです。あの花《はな》よりも美《うつく》しい、あのこちょうよりもきれいなおまえが、どうしていつまでもこんな寂《さび》しいところに住《す》んではいなかろうと思《おも》うのです。それを考《かんが》えると、私《わたし》の胸《むね》はふさがって、いっぱいになります。」と、姉《あね》はいいました。 「姉《ねえ》さん、私《わたし》が、あなたやお父《とう》さんを捨《す》てて、どこへかゆくといわれるのですか。私《わたし》は、一|生《しょう》お父《とう》さんや、あなたのそばで暮《く》らします。そして、また、今度《こんど》の世《よ》にも、お慕《した》わしい姉《ねえ》さんの妹《いもうと》となって、かならず生《う》まれてまいります。」と、妹《いもうと》は泣《な》いて姉《あね》にすがりました。二人《ふたり》は、たがいに抱《だ》き合《あ》って、しばらく無言《むごん》でありました。  ふとしたことから、姉妹《きょうだい》の父親《ちちおや》が目《め》を患《わずら》いました。はじめのうちは、じきになおるだろうと思《おも》っていましたが、だんだん悪《わる》くなって、一通《ひととお》りでない不自由《ふじゆう》をするようになりました。  ことに孝行《こうこう》の姉《あね》は、昼《ひる》となく、夜《よる》となく看病《かんびょう》をして、どうかして父親《ちちおや》の目《め》がなおらないものかと心《こころ》を傷《いた》めました。姉《あね》の疲《つか》れたときは、妹《いもうと》がかわって看病《かんびょう》をいたしました。けれど、悪性《あくせい》の眼病《がんびょう》とみえて、なかなかなおりそうにも思《おも》われませんでした。 「おまえは、家《うち》にいて、よくお父《とう》さんの看病《かんびょう》をしていてください。私《わたし》は、薬《くすり》をさがしてきますから。」と、姉《あね》はいい残《のこ》して、高《たか》い山《やま》へ上《のぼ》ったり、深《ふか》い谷《たに》に下《くだ》ったりして、眼薬《めぐすり》になる草《くさ》の根《ね》や、岩間《いわま》から滴《したた》る清水《しみず》を持《も》ってきて、いろいろと看病《かんびょう》をいたしました。けれど、それらの薬《くすり》の力《ちから》でも目《め》はなおりませんでした。 「ああ、私《わたし》たちの力《ちから》では、とてもお父《とう》さんの眼病《がんびょう》をなおすことができない。どうしたらいいだろう。どうか、神《かみ》さま、私《わたし》たちの命《いのち》に換《か》えてもよろしゅうございますから、父《ちち》の目《め》をもとのようになおしてください。」と、二人《ふたり》は神《かみ》さまに祈《いの》っていました。  すると、ある日《め》のこと、見慣《みな》れない男《おとこ》の旅人《たびびと》が門口《かどぐち》に立《た》って、道《みち》を聞《き》きました。そのとき男《おとこ》は、二人《ふたり》が父親《ちちおや》の看病《かんびょう》をしているのをながめて、 「ああ、その目《め》はなおりっこのない悪性《あくせい》な眼病《がんびょう》だ。おまえさんたちが、いくら看病《かんびょう》をしてあげても無効《むこう》でしょう。」といいました。  姉《あね》と妹《いもうと》は、びっくりして、その男《おとこ》の顔《かお》を見上《みあ》げました。その男《おとこ》はおちついて、 「なにも疑《うたが》いなさるな。私《わたし》は、目《め》のことをよく知《し》っているのです。」といいました。 「そんなら、どうか、あなたのお力《ちから》で父《ちち》の目《め》をなおしてくださることはできませんか。」と、二人《ふたり》は訴《うった》えました。 「私《わたし》は、ここに目《め》の霊薬《れいやく》を持《も》っています。この薬《くすり》は、千|万《まん》の貝《かい》を砕《くだ》いて、その中《なか》から探《さが》した目《め》の霊薬《れいやく》で、どんなものにも換《か》え難《がた》い貴重《きちょう》な品《しな》です。なんでも南《みなみ》の国《くに》の王《おう》さまが、この薬《くすり》を国《くに》を賭《か》けてお探《さが》しになっているということを聞《き》いて、いま持《も》ってゆく途中《とちゅう》にあるのです。」と、男《おとこ》は答《こた》えました。  二人《ふたり》は、これを聞《き》いて、ますますびっくりしました。 「お願《ねが》いでございます。ごらんのとおり、私《わたし》たちはなにもそのお薬《くすり》に換《か》えるほどのものを持《も》っていません。命《いのち》をさしあげます。どうぞ、そのお薬《くすり》を少《すこ》し分《わ》けてください。」と、二人《ふたり》は男《おとこ》に向《む》かって頼《たの》みました。 「一つしかない薬《くすり》を分《わ》けることはできない。が、そんなら、私《わたし》のくれいというものをくださるなら、この薬《くすり》をあなたのほうにさしあげましょう。」と、男《おとこ》はいいました。 「なんでも、私《わたし》たちの持《も》っているものなら、みんなあなたにさしあげます。」と、二人《ふたり》は誓《ちか》いました。  男《おとこ》は、小《ちい》さな箱《はこ》の中《なか》から、銀色《ぎんいろ》に光《ひか》る小豆粒《あずきつぶ》ほどの石《いし》を取《と》り出《だ》しました。 「さあ、これです、この石《いし》をさらの上《うえ》で、いつまでもかかって溶《と》いて、その水《みず》を目《め》につけるのです。」と、教《おし》えてくれました。  姉《あね》と妹《いもうと》は、その小《ちい》さな光《ひか》る石《いし》を、さらの白《しろ》い面《めん》で溶《と》かしました。そして、それを父親《ちちおや》の目《め》につけました。すると不思議《ふしぎ》に、いままで、閉《つぶ》っていた目《め》が開《ひら》いて、見《み》るまに、めきめきとなおりはじめたのです。  二人《ふたり》は、あまりの霊薬《れいやく》のききめに驚《おどろ》いて目《め》をみはりました。そのとき、男《おとこ》は、 「さあ、私《わたし》の望《のぞ》みを申《もう》しあげます。私《わたし》に、どうぞ、この美《うつく》しい妹《いもうと》さんをください。」といいました。  姉《あね》と妹《いもうと》は、心《こころ》の中《なか》で当惑《とうわく》いたしました。けれど、前《まえ》の約束《やくそく》をどうすることもできませんでした。 「そんなら、姉《ねえ》さん、私《わたし》はゆきます。」と、妹《いもうと》は泣《な》いていいました。姉《あね》も、また父親《ちちおや》も泣《な》いて別《わか》れを悲《かな》しみました。しかし、いまさらどうすることもできませんでした。ついに、妹《いもうと》は、男《おとこ》に連《つ》れられて、この家《うち》を出《で》ていったのであります。  妹《いもうと》がいってしまってから、姉《あね》はさびしく日《ひ》を送《おく》りました。いまごろ妹《いもうと》は、どこにどうして暮《く》らしているだろうと思《おも》いました。妹《いもうと》からは、なんのたよりもありませんでした。姉《あね》は一人《ひとり》、小川《おがわ》にそうて歩《ある》いてはたたずみ、たたずんではまた歩《ある》いて、妹《いもうと》のことを思《おも》っていました。いつか、二人《ふたり》は、いっしょにこの路《みち》を歩《ある》いたこともあったのだと思《おも》いました。足《あし》もとに咲《さ》いている草《くさ》の花《はな》を見《み》るにつけ、空《そら》に漂《ただよ》う、雲《くも》の影《かげ》を見《み》るにつけ、妹《いもうと》の身《み》の上《うえ》を案《あん》じていました。  それからというもの姉《あね》は、毎日《まいにち》、川《かわ》の辺《ほとり》にきてはたたずんで、じっと水《みず》の面《おもて》に映《うつ》る自分《じぶん》の姿《すがた》を見《み》てはものを思《おも》い、また、かなたの空《そら》に飛《と》ぶ雲《くも》の影《かげ》を見《み》ては涙《なみだ》に暮《く》れていましたが、不思議《ふしぎ》や、ある日《ひ》のこと、姉《あね》は日《ひ》が暮《く》れても帰《かえ》らずに一《ひと》ところに立《た》ちつくしていますと、一|夜《や》の中《うち》に姉《あね》の姿《すがた》は消《き》えて、そこに一|本《ぽん》の柳《やなぎ》となっていたのであります。  姉《あね》は、とうとう、柳《やなぎ》の木《き》になってしまいました。  妹《いもうと》は、家《うち》を出《で》てから、その男《おとこ》の人《ひと》に連《つ》れられて、知《し》らぬ他国《たこく》を旅《たび》して歩《ある》きました。その間《あいだ》に、男《おとこ》はまた苦心《くしん》して、目《め》の良薬《りょうやく》を探《さが》しました。そして、やがて、海《うみ》を渡《わた》って、南《みなみ》の国《くに》の王《おう》さまに献《けん》じようといたしました。  男《おとこ》と妹《いもうと》は、船《ふね》に乗《の》って海《うみ》を渡《わた》りました。幾日《いくにち》も、幾日《いくにち》も、航海《こうかい》しました。海《うみ》の真《ま》ん中《なか》に出《で》ますと、どこを見《み》ましても、山《やま》も見《み》えなければ、また島影《しまかげ》も見《み》えませんでした。ただ、夜《よ》が明《あ》けると真《ま》っ赤《か》な太陽《たいよう》が東《ひがし》の方《ほう》から上《あ》がりました。また、日暮《ひぐ》れ方《がた》になると、かなたの地平線《ちへいせん》が炎《ほのお》のように燃《も》えて、太陽《たいよう》は海《うみ》に沈《しず》みました。二人《ふたり》の乗《の》っている船《ふね》は、その夕焼《ゆうや》けの方《ほう》を指《さ》して進《すす》みました。そして、多《おお》くの日数《ひかず》を経《へ》てから、ついに船《ふね》は、南《みなみ》の志《こころざ》した国《くに》の港《みなと》に着《つ》きました。男《おとこ》は、さっそく霊薬《れいやく》を王《おう》さまに献《けん》じたのであります。そのお礼《れい》として、男《おとこ》は広《ひろ》い土地《とち》をもらって、なに不足《ふそく》ない暮《く》らしをすることができました。  その国《くに》は、いつもいろいろな花《はな》が咲《さ》いていました。そして、いつも夏《なつ》のように草木《くさき》がしげって美《うつく》しいちょうが飛《と》んでいました。  妹《いもうと》は、家《うち》をたってから、幾年《いくねん》かになります。その間《あいだ》、父《ちち》のことを思《おも》ったり、姉《あね》のことを思《おも》ったりしました。しまいには、あまりに思《おも》いつづけましたので、ついに病気《びょうき》となって、毎日《まいにち》ものもいわずに沈《しず》んでいました。男《おとこ》は、これを見《み》てかわいそうに思《おも》いました。 「こんなに、なに不足《ふそく》なくても、おまえは、故郷《こきょう》へ帰《かえ》りたいのか。」と、男《おとこ》はいいました。  妹《いもうと》は、目《め》にいっぱい涙《なみだ》をためて、黙《だま》ってうなずきました。 「そんなら帰《かえ》ってもいい、けれど、幾《いく》千|里《り》となく遠《とお》い。船《ふね》に乗《の》っても幾年《いくねん》かかるかしれない。その間《あいだ》には、雨《あめ》が降《ふ》り、風《かぜ》が吹《ふ》くだろう。おまえは女《おんな》の身《み》で、どうして帰《かえ》ることができようか。」と、男《おとこ》はいいました。  妹《いもうと》は、これを聞《き》くと、悲《かな》しくなって泣《な》いていました。  妹《いもうと》は、海岸《かいがん》の岩《いわ》の上《うえ》で、沖《おき》の方《ほう》を見《み》て、故郷《こきょう》に憧《あこが》れて泣《な》いていました。そのとき、ちょうど王《おう》さまのお通《とお》りがありました。  王《おう》さまは、女《おんな》の泣《な》いているのを見《み》て、家来《けらい》を遣《つか》わして、その泣《な》いている理由《いわれ》をたずねられました。妹《いもうと》は、一|部《ぶ》始終《しじゅう》のことを物語《ものがた》りました。王《おう》さまは、これをお聞《き》きになると、たいへんに妹《いもうと》をあわれに思《おも》われました。そして、家来《けらい》の中《なか》から魔法使《まほうつか》いのじいさんをお呼《よ》びになりました。そして、どうかして、この女《おんな》を、故郷《こきょう》に帰《かえ》してやる工夫《くふう》はないものか、とおっしゃられました。  まゆ毛《げ》の長《なが》い、つえをついている、白髪《しらが》の魔法使《まほうつか》いは、うやうやしく、頭《あたま》を下《さ》げていいますには、 「このままの姿《すがた》では、とても幾《いく》千|里《り》となく遠《とお》い国《くに》へ帰《かえ》ることはできません。なにか姿《すがた》を変《か》えなければなりません。」と申《もう》しあげました。 「なんなりとも、汝《なんじ》の力《ちから》でできることなら、姿《すがた》を変《か》えてゆけるようにしてやれ。」と、王《おう》さまはいわれました。  魔法使《まほうつか》いは、ついているつえの先《さき》で女《おんな》の肩《かた》をつつきました。するとたちまち、美《うつく》しい妹《いもうと》の姿《すがた》は消《き》えて、一|羽《わ》のつばめとなってしまいました。  つばめは、王《おう》さまの頭《あたま》の上《うえ》の空《そら》を、二、三べんまわりました。そして、どことなく影《かげ》を消《け》してしまいました。  つばめは、昼《ひる》となく、夜《よる》となく海《うみ》の上《うえ》を渡《わた》りました。疲《つか》れたときは、船《ふね》のほばしらの頂《いただき》に止《と》まって休《やす》みました。そして、幾日《いくにち》かの後《のち》、もとの我《わ》が家《や》へ帰《かえ》ってきました。父親《ちちおや》は、まだ達者《たっしゃ》でいられました。けれど、鳥《とり》になってしまった妹《いもうと》は、もはやものをいうことができません。つぎに姉《ねえ》さんを探《さが》しました。けれど見《み》あたりません。妹《いもうと》は、川《かわ》の辺《ほとり》へ飛《と》んでゆきました。すると、なつかしい姉《ねえ》さんの姿《すがた》によく似《に》た柳《やなぎ》の木《き》が一|本《ぽん》立《た》っていました。これは、きっと姉《ねえ》さんにちがいないと思《おも》いましたから、その枝《えだ》に止《と》まりました。  つばめは、柳《やなぎ》の木《き》の枝《えだ》に止《と》まって、しきりに快活《かいかつ》になきました。けれど、柳《やなぎ》の木《き》の枝《えだ》は、風《かぜ》に吹《ふ》かれて、おりおり音《おと》なく揺《ゆ》れるばかりで、なんの答《こた》えもいたしませんでした。  つばめは、秋《あき》の末《すえ》まで、毎日《まいにち》その柳《やなぎ》の木《き》のあたりを飛《と》んで、ないていました。けれど、寒《さむ》くなったときに、どこへか飛《と》んでいってしまいました。それからというもの、毎年《まいねん》春《はる》になると、どこからか、つばめが飛《と》んできて、柳《やなぎ》の木《き》に止《と》まってないていました。 底本:「定本小川未明童話全集 2」講談社    1976(昭和51)年12月10日第1刷    1982(昭和57)年9月10日第7刷 初出:「こども雑誌」    1920(大正9)年7月 ※表題は底本では、「木《き》と鳥《とり》になった姉妹《きょうだい》」となっています。 入力:ぷろぼの青空工作員チーム入力班 校正:江村秀之 2013年10月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。