Me Voila ―― a Cobayashi 中原中也 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#地から2字上げ] 〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ (例)〔Me Voila`〕 アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください http://www.aozora.gr.jp/accent_separation.html -------------------------------------------------------  人がいかにもてなしてくれようとも、それがたゞ暖い色をした影に見え、自分が自分で疑はれるほど、淋しさの中に這入つた時、人よ憶ひ出さないか? かの、君が幼な時汽車で通りかゝつた小山の裾の、春雨に打たれてゐたどす黒い草の葉などを、また窓の下で打返してゐた海の波などを……        ※  実生活は論理的にやるべきだ! 実生活にあつて、意味のほか見ない人があつたら、その人は実生活以外にも世界を知つてゐる人だ。則ち科学でも芸術でもない、大事な一事を!  げにわれら死ぬ時に心の杖となるものがあるなら、ありし日がわれらの何かを慄はすかの何か! ――生を愛したといふことではないか?  小学の放課の鐘の、あの黄ばんだ時刻を憶ひ出すとして、タダ物だと思ひきれるか? (社交家達といふものは理智で笑つて感情で判断する。即ち意味に忠実でないからだ。―――)        ※  さうしてよき心の人よ、あれら手際よい技能家や学者等を恐れたまふな。あれら魂が稀薄なために、夢が浅いので歯切れが好いばかりだ。―――彼等が歯切れの好いことは彼等の人格と無関係だ。        ※  地上を愛さんために、人は先づ神を愛す必要がある! [#地から2字上げ](一九二八・四) 底本:「新編中原中也全集 第四巻 評論・小説」角川書店    2003(平成15)年11月25日初版発行 ※底本のテキストは、著者自筆稿によります。 ※表題は底本では、「〔Me Voila`〕」となっています。 ※副題は底本では、「―― 〔a` Cobayashi〕」となっています。 ※()内の編者によるルビは省略しました。 ※底本巻末の編者による語注は省略しました。 入力:村松洋一 校正:noriko saito 2015年9月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。