日記 一九五〇年(昭和二十五年) 宮本百合子 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定    (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) (例)〻 ------------------------------------------------------- [#大見出し] [#大見出し終わり] [#1字下げ]一月一日[#「一月一日」は同行中見出し] 日  ことしは、12[#「12」は縦中横]月29[#「29」は縦中横]日のおかしな会以来、一つの転期に入っている。元旦早々いろいろの話をきかされる、機関のセンダンぶりについて。 [#1字下げ]一月三日[#「一月三日」は同行中見出し] 火  くら、しげ、正、つ、などがあつまる、29[#「29」は縦中横]日の印象について。 [#1字下げ]一月四日[#「一月四日」は同行中見出し] 水  お客なし。いくらかくつろぐ。  夜T来る。 [#1字下げ]一月五日[#「一月五日」は同行中見出し] 木  新日本文学会の編集会議、夜十一時まで。  基本的人権擁護について。 [#1字下げ]一月六日[#「一月六日」は同行中見出し] 金  長島、来。くれのことがあってゆっくり。いろいろの話。こういう部面にも問題が山積。  宮、きのう、きょう、『前衛』の論文をちぢめる仕事。 [#1字下げ]一月七日[#「一月七日」は同行中見出し] 土  大森さんの口述でやっと「文学と生活」を一応まとめる。 [#1字下げ]一月八日[#「一月八日」は同行中見出し] 日  非常につかれが出ている。宮、きょうは、きのう統制委員会・政治局合同会議がきまって日曜でも出席、コミンフォルムの野坂批判新聞に公表。いろいろに考えられる。 [#1字下げ]一月十八日[#「一月十八日」は同行中見出し] 水  拡大中央委員会 [#1字下げ]一月十九日[#「一月十九日」は同行中見出し] 木  拡中 第二日目 [#1字下げ]一月二十日[#「一月二十日」は同行中見出し] 金  三日目、地方ブロック会議、宮九州へふっとばされるらしい。 [#1字下げ]一月二十一日[#「一月二十一日」は同行中見出し] 土  宮九州行きについて、いろいろの意見がある。  一般報告は、いろいろ疑問をもたれる、所感に対する態度および、文化問題の部分。しかし、関東はやっきになって、本質的討論をさせない。 [#1字下げ]一月二十二日[#「一月二十二日」は同行中見出し] 日  細胞の集会で、疑問を出しても、それは反党的であったと自己批判させ、松川事件の被告が、所感の前半は正しく後半はあやまりであるというのはほめるべき態度である、というようなことを律、本部集会で話す。 [#1字下げ]一月二十三日[#「一月二十三日」は同行中見出し] 月  所感が生きているかのように、それについての検討をさせない方策ではりつめている。  政治局決定で宮九州にきまる、人事一任、わきからの報告では何もしないこと、など、を条件とする。 [#1字下げ]一月二十四日[#「一月二十四日」は同行中見出し] 火  天皇の威信失つい急速である。アメリカは、日本のKPはチトー化しつつあるとよろこんでいる由。 [#1字下げ]一月二十五日[#「一月二十五日」は同行中見出し] 水  労働組合をこわしておいて、こんどは一般の統一戦線で、という式。右へ右へじりじり行く可能がある。そうさせているもの徳田の無理論性、志田のあいまい性、律のキツネ性、西沢のムコ根性と食わせられている党官僚の卑屈さ。 [#1字下げ]一月二十六日[#「一月二十六日」は同行中見出し] 木  宮、風邪ひきとなる、ノドかぜ。つまり疲労である。自分のつかれもひどい。こんどのことでは(コミンフォルム)実に日本の党の質の低さ、わるさがはっきりした。日本の悲劇のふかさ。学生はなかなか鋭い。ポツダム宣言を受諾した東クニ内閣と云う。 [#1字下げ]〔二〕月二日[#「〔二〕月二日」は中見出し]  宮のふとんが九州でいる、木綿の地を見る、それとうら。云いつける。 [#1字下げ]〔二〕月三日[#「〔二〕月三日」は中見出し]  宮の夜着を母のおふるの大島でつくる。裏地をはかっていたら平田氏来る。小説十五日までにのびる。たちまちがいをして、ミシンではいで貰う。 [#1字下げ]〔二〕月四日[#「〔二〕月四日」は中見出し]  夜、哲学者夫人同伴、美代子の良人。あとからつる。台所でやっていたらY子のところへ電報ハハキトク、スクカヘレ。十時ので立たす、汽車賃 500、見マイ 2000、何だかほんとという心もちがしない。かえって来なくてもいい。彼女のつめたさ。 [#1字下げ]〔二〕月五日[#「〔二〕月五日」は中見出し]  編輯会議、久保田、岡本、間宮、徳永、あと欠席。間宮、大日本が新日本をことわって来た。アカツキにまわすという、自分反対。徳永反対。またもう一遍押すことにきまる、もしだめというならば、自分がゆこうと思う。五月号のプラン決定。間宮のやりかたのヒートロスチ[#1段階小さな文字]〔狡猾さ〕[#小さな文字終わり]よくわかった。 [#1字下げ]〔二〕月六日[#「〔二〕月六日」は中見出し]  きょう宮、はじめて朝食堂へ下りた、床をしいて。しかしまだ食ヨクなし、やっと仕事にとりつける。大森寿恵子手つだいに泊る、そして、年よりの女、下働きに来ることにきまる。宮十日に出発は無理だ。(以上、二月の分を間違う) [#1字下げ]二月四日[#「二月四日」は同行中見出し] 土  林米子、きょうから水のさんのところの治療に通うことにする、一回 200 円費用をもつ。Yちゃん、ハハキトクスグカヘレで夜十時に立つ、お客四人に食事、咲とわたし大童、古、松(夫人)、クボ [#1字下げ]二月五日[#「二月五日」は同行中見出し] 日  編輯会議。  文学サークル協ギ会のことについて岡本潤、青山が指導していると云うと「フーム、そういうことがあるならいい、この間の話は放っておけないね」青山に関東地方の□□□[#「□□□」に「(三字不明)」の注記]にたのまれたことを云い出す。グループの反青山、増山熱にのって、その反面、御用をつとめようとするところ。それからヴェトナムについて(知識そのものをしっているんだから、利用できると思う)云々  大日本がダメということ。 [#1字下げ]二月七日[#「二月七日」は同行中見出し] 火  きょうからやっと仕事にとりかかる。「道標」第三部第四章  朝ふと目がさめたら、となりで人の声がする岡田文吉の声“十三日の芸術家会議には書記長と野坂が出ると云ってる”“紺野がつるし上げられたそうだ” [#1字下げ]二月八日[#「二月八日」は同行中見出し] 水  仕事。  政治局で、まだ青山の論文をまわしよみしている由。 [#1字下げ]二月十五日[#「二月十五日」は同行中見出し] 水  雪。宮はじめて政治局。 『婦人公論』未亡人の手記の選者座談会、もちろん欠席。  やっと『前衛』の論文出るにきまる、“これを出すのは君のためにならない”と云った由。 [#1字下げ]二月十六日[#「二月十六日」は同行中見出し] 木  徳の“われわれは落付いてやっている”コミンフォルムののちの第一声がこれで通ると思っているとは世間しらずも甚しい。共産党書記長というものは幹事長ではない。 [#1字下げ]二月十七日[#「二月十七日」は同行中見出し] 金  開成山の小池歯科医の未亡人、上京、国のところに泊っている。必死に生きている人と咲枝との対照。 [#1字下げ]二月十八日[#「二月十八日」は同行中見出し] 土  寒い  仕事、もうすこしで終るが、伸子のボーッとしたところがうまく描き出されない。吉田をめぐる文士のおたいこ言葉(ニュアンス)天皇、宮様、首相、それぞれ段があって、うまいものだ、そして小説は益〻、無くなる、荷風(放談)(エッセイ)これだけいうものもいない。 [#1字下げ]二月十九日[#「二月十九日」は同行中見出し] 日  小説54[#「54」は縦中横]枚わたす。  税が八十万で、四十万ぐらい払うことになりそうだ。うちにそんな金はない。宮の出発木曜日にきまる。Yちゃんの帰りのびる。アジアの地図を眺める、そして、九州はこんなに近いのに、と思う。わたしが、一つ太陽の下、どこにいても、と思うのが自然にならなければならないのが、しみじみわかる。1950 年の一月は、わたしたち夫婦の一生に一つの大きいマイル・ストーンとなった。 [#1字下げ]二月二十二日[#「二月二十二日」は同行中見出し] 水  夜、風呂から出て、宮、墨をすり、たのまれた色紙に字をかいた。実にいい字、“すでに十億の民衆が平和のために立った”それを見たらからりとしたいいこころもちになって、苦しい気持が忘られた。 [#1字下げ]二月二十三日[#「二月二十三日」は同行中見出し] 木  宮、福岡へ出発。 [#1字下げ]三月六日[#「三月六日」は同行中見出し] 月  やっと、日評の辞典の原稿をかき終った。大疲れ、二度直したから。 [#1字下げ]三月七日[#「三月七日」は同行中見出し] 火  小説の下ごしらえ。 [#1字下げ]三月九日[#「三月九日」は同行中見出し] 木  仕事。 [#1字下げ]三月十日[#「三月十日」は同行中見出し] 金  仕事。 [#1字下げ]三月十一日[#「三月十一日」は同行中見出し] 土  仕事。  アサから奥さん来。判断にやっぱりちがうところがある。  宮から帰りをしらせる電報。 [#1字下げ]三月十二日[#「三月十二日」は同行中見出し] 日  小説  m夫婦。わたしの生活にない女、男、一家。現実の一つの面。風俗小説の生れ出る原因。分析のできない人のごたごた、とりみだし、それで風俗小説にならざるを得ない。 [#1字下げ]三月十三日[#「三月十三日」は同行中見出し] 月  宮、夜七時何分かで帰って来た、土からほり出した何かのキノコのように、もっくりとして帰って来た、気持よさそうに。  仕事 [#1字下げ]三月十四日[#「三月十四日」は同行中見出し] 火  仕事、27[#「27」は縦中横]枚まで。アサ夫人の話、どこまでどうか、宮出勤。 [#1字下げ]三月二十日[#「三月二十日」は同行中見出し] 月  宮九州へ、午後一時で立ったが、まだ書きもの終らず(積極的意義)沼津までついて行って、夜八時ごろ、グロッキーで送ったものかえる。 [#1字下げ]四月三日[#「四月三日」は同行中見出し] 月  世界評論へやっと「十二年の手紙」第一巻分十三年までわたす。 [#1字下げ]四月八日[#「四月八日」は同行中見出し] 土  宮、帰宅。 [#1字下げ]〔MEMO〕[#「〔MEMO〕」は小見出し] [#2字下げ]第十八拡中以後の言論抑圧と討論の禁止、研究会禁止、はなはだしかった。 [#1字下げ]四月十日[#「四月十日」は同行中見出し] 月  二つにわれた感じだ。 [#1字下げ]四月十一日[#「四月十一日」は同行中見出し] 火  たった二十日の間に、これだけのことをやっているんだから。 [#1字下げ]四月二十日[#「四月二十日」は同行中見出し] 木  20[#「20」は縦中横]日ごろの中委がのびた、病気だからというわけで。 [#1字下げ]四月二十一日[#「四月二十一日」は同行中見出し] 金  28[#「28」は縦中横]、29[#「29」は縦中横]、30[#「30」は縦中横]と中央委員会をもつなんて、国際記録にもないことだ。きっと、インターフェアがおこる、あるいはそれをカウントして、こういう日どりかもしれず、大したことはない、そうじゃあない、やめさせて五月へ入ってあとにするべきだ。“もうかえられない。” [#1字下げ]四月二十六日[#「四月二十六日」は同行中見出し] 水  編集会議。徳永来ズ、菊池来る、八月号の内容をきめる。 [#1字下げ]四月二十八日[#「四月二十八日」は同行中見出し] 金  第十九回拡中委、第一日。 [#1字下げ]四月二十九日[#「四月二十九日」は同行中見出し] 土  同、第二日。分派問題が一応ケリがついた、夜九時半ごろ、宮の官僚主義批判がはじまりかけていたとき、国際情勢を語るといってタスも出したあと、立ち上ってテーブルを叩いて罵倒して、そこへ、スルスルと出て来て野坂によませる、吉田首相のコンセイによって共産党を禁止する許可を与える、という意味の“緊急情勢”。さーっと局面一転。一ヵ月先に中委もつがそれはポドだろう、ここに今いる全員を召集するかどうか分らぬ云々。五月三日重大声明! [#1字下げ]四月三十日[#「四月三十日」は同行中見出し] 日  第三日はかくの如くしてボシャル、一般報告草案も討ギ採択セヌママ。志賀政治局追放せず[#「志賀政治局追放せず」に波線]。  ○宮、全体の動き、自分のたたかいぶりについて、深く考えている、いくらかボッとして見えるほど。 [#1字下げ]五月一日[#「五月一日」は同行中見出し] 月  メーデー、60[#「60」は縦中横]万人。五年来の盛況。夜、風のおとにもおどろかれぬる人々、宮、報告に対する意見をかきに出かける、  夜の部屋の様子。ねると、体の向いた方へ、胸の中の悲しさがかたよる、あの感じ。 [#1字下げ]五月二日[#「五月二日」は同行中見出し] 火  宮、仕事。 [#1字下げ]五月三日[#「五月三日」は同行中見出し] 水  宮、仕事。声明はもってまわって日本人民が処理するだろうと云い、決して懇請により云々は云っていない、云えない。中委、ペテンをくう。歴史的ペテンである。 [#1字下げ]五月四日[#「五月四日」は同行中見出し] 木  このペテンをきっかけにして別のお手もり党をつくること明白となった。参院選挙、本日より一ヵ月、この終盤にもう一芝居があるだろうと思う。そして、労働者だか何だか党として、自分らはかげで李あたりにあやつられて。一月からわずか四ヵ月で、これだけのぺてんを組織した。うでがいい。そして、これには、大きい Back がある、組織的指導部がある。 [#1字下げ]五月六日[#「五月六日」は同行中見出し] 土  午後一時、宮九州へ行く。  世界評論がつぶれた。青木来、彼の生活についての話もきいて、おどろいた。「十二年の手紙」かえしてもらうことにする。 [#1字下げ]〔MEMO〕[#「〔MEMO〕」は小見出し] [#ここから1字下げ]  宮の秘密主義は(私に対する)甚しすぎる。それで、わたしは小説もどうやら書けているのだけれども。 [#ここで字下げ終わり] [#1字下げ]五月七日[#「五月七日」は同行中見出し] 日  宮の政治論文集を早く出しておこうと思う。 [#1字下げ]五月八日[#「五月八日」は同行中見出し] 月  光っちゃん、帰ることにして、岩上夫婦、土屋夫婦、永見母子をよぶ、仕事下ごしらえ。 [#1字下げ]五月九日[#「五月九日」は同行中見出し] 火  ちくまに、十二年の手紙を出すことにきめる。  仕事やっと着手。 [#1字下げ]五月十日[#「五月十日」は同行中見出し] 水  宮から島田へよった七日のハガキ来る、サカサにかいてある。『伸子・二つの庭』2,000 増刷の由、はじめ 4,000 [#1字下げ]五月十一日[#「五月十一日」は同行中見出し] 木  72°[#「72°」は縦中横]、むし暑いことお話の外、寿、夕方六時、開成山から来る。午後地検から電話、去年十月『文芸春秋』に顕の書いた「網走の覚書」中、山県が名ヨキソンで告訴しているから、その説明をキキタイと。 [#1字下げ]五月十二日[#「五月十二日」は同行中見出し] 金  72°[#「72°」は縦中横]、あつい。仕事前、宮へ手紙かく。 [#1字下げ]六月一日[#「六月一日」は同行中見出し] 木  都は、中ののビラもはらせない。街頭をさせない。  新日本文学会カンカン。 [#1字下げ]六月三日[#「六月三日」は同行中見出し] 土  居住、ビラ、選挙イハンだと云って八時半ごろから十二時までとめられた由。大亢奮。  青木、(クラ)早くかえった。 [#1字下げ]六月四日[#「六月四日」は同行中見出し] 日  参議員センキョ、首都建設委員会住民投票。中のだけかく。反対。原さんに電話、声をからしている。“あとにわたしの責任がのこります” [#1字下げ]六月五日[#「六月五日」は同行中見出し] 月  晴、S、実際上の結婚した。 『新日本文学』の原稿、『十二年の手紙』の“はしがき”ちくまもこちらもいそぐ。  きょうの新聞、吉田、非合法化を考慮と声明。団体キセイ令でやるらしい。宮、八日ごろかえる由、東京にいるようになるかもしれぬ由。 [#1字下げ]六月六日[#「六月六日」は同行中見出し] 火  朝十時半ごろmmから電話、共産党中央委員の追放がマックから発表された由、十二時ニュース。新聞。パージとはうまいことを考えた。21[#「21」は縦中横]日後有効。 [#1字下げ]六月八日[#「六月八日」は同行中見出し] 木  宮九州から帰京。 [#1字下げ]七月三日[#「七月三日」は同行中見出し] 月  午後一時ごろ、特審局より三人団体等規正令関係でキキタイことありと、m、午後四時かえる。  徳田ら、キヌ川温泉で会議した由。 [#1字下げ]七月四日[#「七月四日」は同行中見出し] 火  アメリカ陸上部隊、北朝鮮軍とぶつかる、大したことなし。日本は行政的[#「行政的」に傍点]に協力する、郵便その他をたすけて。これを国連加入の条件とする。宮、特審局へ午後二時に。 [#1字下げ]七月五日[#「七月五日」は同行中見出し] 水  ラジオニュース、“軍隊と物資とは依然として日本からケイゾク的に送られている”“空軍は 953 回出撃した”  m在宅。 [#1字下げ]七月七日[#「七月七日」は同行中見出し] 金  北京日報の放送、日本の現状について。多くの示唆がある、永続的なやりかたについての。 [#1字下げ]七月十二日[#「七月十二日」は同行中見出し] 水  右翼多数派分派に対して、少数分派をつくるようになってはならないということ、やっと徹底した由。“どうもこの頃わたしの文学は源氏物語になって来た”  夕立模様 [#1字下げ]七月十三日[#「七月十三日」は同行中見出し] 木  軒先から見えるところは曇っているが青桐の葉の間から見える東に青空がある。雨の音、宮、きょうは、雑誌片づけ。みっともないよ、と戸棚まで。自分仕事している。宮のそのこころを感じつつ。1932 に本を売ったことを思い出しつつ。  夕立模様。 [#1字下げ]十二月八日[#「十二月八日」は同行中見出し] 金  上富士の土地がやっとうれた、24[#「24」は縦中横]のうちから五分出した、K 10,000、寿 5,000、20,000 をいろいろに小わけ。30,000 を借金かえし(mの) [#1字下げ]十二月二十七日[#「十二月二十七日」は同行中見出し] 水  咲が帰って来て間もなく内玄関から上って来た人、インバネス、私服“マア”膝をついてしまった。あんちゃん、下宿であき巣にはいられトランクぬすまれた由、あとから寿も来る。 [#1字下げ]十二月二十八日[#「十二月二十八日」は同行中見出し] 木  久しぶりでみんなでおそい朝食、コタツで話し、m外出。夕飯にかかる。 [#1字下げ]〔十二月の―MEMO―の欄に〕[#「〔十二月の―MEMO―の欄に〕」は中見出し] [#ここから1字下げ]  宮九州行きのためにつくった夜具木綿しき二枚、木綿かけ一枚、めいせんかけ一枚(きれこちら綿だけ)夜着(裏、わた買)総二〇、八五〇円也、びっくり敗亡。 [#ここで字下げ終わり] [#1字下げ]〔手帳の終わりに〕[#「〔手帳の終わりに〕」は中見出し]  一月七日 出席、統制委員会で、元旦のことについて。明日、統制委員会と政治局合同会議をやるときめる、そのとき、統制委員会としての意見をまとめて答えなかった。ワンと云われてそのままもつことにした。それについて宮自分でいや。  一月八日 野坂に対する「コミンフォルムの批判」各紙に出る、「徳田との勢力争いにピリオド。徳田はストライキやその他の事件に責任あるとみとめられている者だ」というのが、連合国の意見[#「意見」に傍点]の由。いろいろ微妙重大である。  一月十八日、十九日、二十日 中委  二月┐ 宮九州  三月├ この間二十日ばかり宮九州に行っていたうちにいわゆる「分派」  四月┘ 二十八、二十九、三十、拡中二十九日で「分派」問題をまとめただけで「重大声明」でビュロクラティズム封サ。  五月四日 宮九州。  五月中旬以降アカハタの編輯(!)  六月四日 参議院センキョ。  六月五日 吉田の非合法化声明、オーストラリアの反 K. P. 法をまねする由、まず団体キセイ令をつかうらしい。(五月三〇日の人民ひろばの人民大会でプロボケーション八名つかまり軍事サイバン最高十年GHQで再ケントーして決定の由)  五日 СССР代表43[#「43」は縦中横]名一どきに交たいした ワシントン「当惑の一語」のよし  六月三日 トルーマン、このさき五年は戦争ナシ、と。  六月六日 党中央委員政治局員公職追放発表  同 八日 宮、九州からかえる、アカハタ編輯部員追放、そのリストの中にはアカハタに関係のない人まで加っている、情報の性質がわかる。日本へ来るとすぐ行っていた。  六月二十七日まで、パージユーヨ期間。  六月二十五日 北鮮軍が38°[#「38°」は縦中横]線を越して南下(二十三日に南から入っている)  六月二十七日号の『指針』、N執筆。めちゃめちゃ。逆効果  六月二十七日 期限だが、徳田その他居所不明。  七月七、八、九日 北京日報の日本の現状放送。  北鮮軍は共産軍とよばれはじめて、ますます南下  七月十五日ごろ、いろいろ  花火があっちこっちであがっている、新聞に納涼踊の写真。徳田その他へタイホ状が出ることにきまった。  七月二十日「潜行□[#「□」に「(一字不明)」の注記]九氏」のマン画、左で暴力革命の発射準備。右で国際派弾圧、徳、[#眺望鏡の図(fig46263_01.png、横30×縦31)入る]の眺望鏡を出して見ている、オマワリのくつ、その前でまわれ右まわれ左している、  ○七月二十五日『活動指針』九州地方委員会の「宮本、志賀、春日庄次郎の政治的責任を追究する」という文章をのせ、宮本は「分派の精神的支柱から今や分派そのものになった」由。  ○中国地方委員会決定として、多数派分派の策動をバクロし、党の統一のために中央委員会の確立を要求している。  東京都委、区委。各地区細胞に宮本、志賀除名決定をおしつけて、賛成しない党員は除名、それを反対した細胞は解散とおどしつけている、中央区では決定した。  ×本部細胞で、下からの決定を出させることに成功したから普及する。自己批判せよ、自己批判とは、特高的自白要求。意見はうけつけない。  七月二十八日 夕立、おいてある氷から湯気の立つのが見えている、せみの声、青桐の葉をうつ雨。「そんなところへ行くなんて! 何のしかけがあるかわからない」  スエ子が傘をとりに行った七階の気味わるさ、 [#1字下げ]〔原稿用紙に〕[#「〔原稿用紙に〕」は大見出し] [#1字下げ]七月五日[#「七月五日」は中見出し] 「軍隊と物資とは依然としてケイゾク的に日本から送られつつある」 「空軍は、九百五十三回出撃した」  各国の軍隊の統一的指揮をするためにマック国際連合軍総司令官一両日中「国際連合軍の旗の下に行動することができるようになるわけです」 [#1字下げ]七月六日[#「七月六日」は中見出し] [#3字下げ]あつい日、きょうから氷をおきはじめる。  宮、出かける前のガタガタさわぎ。  一息入れて仕事しようとしてお茶の湯をわかして食堂のガスの前にいる。健、食堂で、 「おまわりさん、敵のヅンツっていうよ、『敵のヅンツを攻撃して』って」 「健ちゃん、このごろおまわりさんよくあそんでくれる」 「ウン」 「そして宮本のおじちゃん何しているってきくね、この間九州へ行っていたとき九州へ行っているんですかってきいたね」 「ウン」  ◎本日中に徳田居どころをはっきりしなければタイホ命令。  ◎昨日文連と『新文化』ガサ、封印、責任者鈴木ケンキョ  ○何をなすべきかについて考えた、そしてわかったところあり、科学的自己批判とその発展。 「世界の子供」の運命について考える、アメリカに smash hit Toy $250 が出て模型住宅をこわす。 [#1字下げ]七月七日[#「七月七日」は中見出し] [#3字下げ]北朝鮮軍南下  米軍包囲された。十一日[#「十一日」に「十日」の注記]間に20[#「20」は縦中横]機失った。  靴は泥沼にくわれる。 [#1字下げ]七月七日[#「七月七日」は中見出し] [#4字下げ]韓国宛電報とり扱停止  国内朝鮮五十余万人平静  ○吉川トク審長    国外に脱出したものがあるかどうかは不明である。  刑事部長会議    金ユーキカン   通信鉄道妨害行為とりしまり [#1字下げ]七月初旬[#「七月初旬」は中見出し]  ○「積極的意義」を、ブルジョア革命の時期として理解しようとするもの多数であるという話。過去のあやまった党の反封建主義がしんとうしている。哲学でさえも。当面の課題を回避しようとする人々の理論づけ。  ○金をつくる人が一家の中で一つのかたまりの中でえばる[#「えばる」に傍点]という現象のブルジョア性について。  ○党内闘争にだけ目をとられて、日本の解放運動全般についての着目を失っている人々の「動き」 [#1字下げ]〔卓上日記に〕[#「〔卓上日記に〕」は大見出し] [#1字下げ]二月二十三日[#「二月二十三日」は同行中見出し] 木曜  宮本出発 [#1字下げ]四月七日[#「四月七日」は同行中見出し] 金曜  日本地質学会総会  全世界に平和声明 [#1字下げ]四月八日[#「四月八日」は同行中見出し] 土曜  かえる [#1字下げ]四月二十八日[#「四月二十八日」は同行中見出し] 金曜  中央委員会第一日 [#1字下げ]五月一日[#「五月一日」は同行中見出し] 月曜  60[#「60」は縦中横]万人の統一メーデー [#1字下げ]五月三日[#「五月三日」は同行中見出し] 水曜  党内闘争を論ず、“劉少奇”  これをのせて、ボルシェビキ的〔二、三字分空白〕の中から官僚主義批判をのぞく。 [#1字下げ]五月六日[#「五月六日」は同行中見出し] 土曜  九州へ出発 [#1字下げ]七月六日[#「七月六日」は同行中見出し] 木曜  アメリカ軍司令命[#「命」に「(ママ)」の注記]発表  戦車が四十台が七月五日の朝早く  損失を蒙らせた  三七度線南西へ進出、  プラーグのジャーナリスト連盟、  mアカハタ発禁を基本人権蹂リンという、 [#1字下げ]七月七日[#「七月七日」は同行中見出し] 金曜  北京人民日報「日本人民闘争の実情」  ストラスナーヤーの発 100 回以上  十日間の「総合戦果」22[#「22」は縦中横]米キおちた  北天安に出た、  33.5° [#1字下げ]七月八日[#「七月八日」は同行中見出し] 土曜  33.7、熱射病がおこる。  午後一時リン時ニュース  マック、吉田に国家地方ケイサツ七万五千のどこへでも動かせる政府直属よび隊、海上保安隊八千増強要請、勝手に「政令」でできる。  ○きょうは34°[#「34°」は縦中横]ぐらいになるそうですよ   34°[#「34°」は縦中横]て何度、マア九十五度よ [#1字下げ]七月九日[#「七月九日」は同行中見出し] 日曜  北鮮軍と云われていたが、きょうから共産軍と放送されはじめた。  天安でぶつかって、アメリカ精鋭部隊が動いている、トルーマンは、朝鮮が永びくもの、というきっかけで徴兵法  ○マックアーサーが連合軍指揮に当っているから日本人が朝鮮の戦下[#「下」に「(ママ)」の注記]に参加するのは国連のケイカクにさしつかえない。 [#1字下げ]七月二十六日[#「七月二十六日」は同行中見出し] 水曜  久保田さんのカット、新日本文学 [#1字下げ]七月二十八日[#「七月二十八日」は同行中見出し] 金曜  二十九日、カットの約束 [#1字下げ]八月一日[#「八月一日」は同行中見出し] 火曜  お見舞 [#1字下げ]八月二十九日[#「八月二十九日」は同行中見出し] 火曜  早起きしてまた眠る。 [#1字下げ]八月三十日[#「八月三十日」は同行中見出し] 水曜  全労連、突然解散、土橋はじめ十二名パージ  岩崎に『平和をわれらに』原稿わたす。 [#1字下げ]八月三十一日[#「八月三十一日」は同行中見出し] 木曜 『読売』、新日本文学会グループの声明を発表した。(一部分) [#1字下げ]九月一日[#「九月一日」は同行中見出し] 金曜 『毎日新聞』  二百十日平穏  板垣正(26[#「26」は縦中横])転向声明を発表、自由労働者の生活をしていた。もつものに非ず  郵逓、農村三千人の赤パージ(予定)  区委員会から新日本文学について詰問。 [#1字下げ]九月三日[#「九月三日」は同行中見出し] 日曜  ゆうべからきょう夕方前までは日曜日  のこちゃん来訪 [#1字下げ]九月四日[#「九月四日」は同行中見出し] 月曜  区委員会から返事大いに立腹する、そして  何年ぶりかで本棚を整理する [#1字下げ]九月九日[#「九月九日」は同行中見出し] 土曜  区委長の御来訪、二時すぎから七時まで。かたくて小さいネジの典型。 [#1字下げ]九月十四日[#「九月十四日」は同行中見出し] 木曜  窓のすき間におぼろ月  のぞいていいじいさんの面でもなし [#1字下げ]九月十六日[#「九月十六日」は同行中見出し] 土曜  かあちゃんのくさむしり、一本二本 [#1字下げ]九月十七日[#「九月十七日」は同行中見出し] 日曜  おやじ草むしり  アサかけこみ びっくり敗亡 [#1字下げ]九月十八日[#「九月十八日」は同行中見出し] 月曜  窓の右角 なぜ竹うった  ○魚やのつけをもって御用きき  二階へ [#1字下げ]九月二十一日[#「九月二十一日」は同行中見出し] 木曜 「道標」おしまいから一つ半前まで。 [#1字下げ]九月二十四日[#「九月二十四日」は同行中見出し] 日曜  婦公、「傷だらけの足」19[#「19」は縦中横]枚  すっかり仕事がすんで、本当に休めるときはなんとたのしいでしょう。 [#1字下げ]九月二十五日[#「九月二十五日」は同行中見出し] 月曜  アサとぶボールをおっかけて、“外野”“ネットバック”なかなか活躍。“ナイスボール!”  ホーラ、アサ! こういうときはお前がいいんだ、一度ごとのホメことば。夜十時、虫の声、アナトール・フランスの「赤い百合」、テレーズは優美かもしれないが下らない。アナトールの婦人カン [#1字下げ]九月二十六日[#「九月二十六日」は同行中見出し] 火曜  少しゆうべから怪しかったところ、すっかりこわばってしまった。  ガノ公と話していたら目の前にドラやきがあるのにそれどころでなし  夜痛んで首をふりふりひとり治療 [#1字下げ]九月二十七日[#「九月二十七日」は同行中見出し] 水曜 『新女苑』、急なことを云ってかけるかどうか。  五郎やん、  夜、床が体をはじき出すように苦しく、おきたりねたりかがんだりさまざま [#1字下げ]九月二十八日[#「九月二十八日」は同行中見出し] 木曜  思ったより早くよくならない。牛乳、トースト、おかゆにさしみ、よる飯一杯、あんかけのつゆ、あじのやいたの  大しかられ。一言もなし、落雷ひとまわりして。  84°[#「84°」は縦中横]あった。キヨ子さん体温はかった由、あつくて変だ、と。 [#1字下げ]十月一日[#「十月一日」は同行中見出し] 日曜  たか子クラブの会  岩崎、原稿のこと。 [#1字下げ]十月二日[#「十月二日」は同行中見出し] 月曜  雨の夜、これだから傘が二本いるね [#1字下げ]十月三日[#「十月三日」は同行中見出し] 火曜  午後哲学の話  男ものの単帯、角帯は似合う  夕飯急にたか子たち来て、九時に立つ、べん当もつくれず。  一日のうちのことと思えず [#1字下げ]十月四日[#「十月四日」は同行中見出し] 水曜  チクマに手紙 [#1字下げ]十月五日[#「十月五日」は同行中見出し] 木曜  池島のところへ手紙をかいた。こういうことを思いつかなかったというのはバカだった。  Yちゃん帰る。実に重荷がおりた。 [#1字下げ]十月六日[#「十月六日」は同行中見出し] 金曜  寿のところへ宮下―矢野の娘、音楽の譜のことについてお目にかかりたい、と。 [#6字下げ]文秋、田川  それで伴からのぞく、細面の男というのの見当がついた。旧特高全部イキている。 [#1字下げ]十月七日[#「十月七日」は同行中見出し] 土曜  春日正一名古屋でつかまった。大阪からつけられて。  午後四時ごろ号外のベルの音。何だろうかと思いつつ仕事。 底本:「宮本百合子全集 第二十五巻」新日本出版社    1981(昭和56)年7月30日初版    1986(昭和61)年3月20日第4刷 ※複数行にかかる中括弧には、けい線素片をあてました。 ※「参議員センキョ」と「参議院センキョ」の混在は、底本通りです。 入力:柴田卓治 校正:富田晶子 2020年12月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。