女の出る蚊帳 田中貢太郎 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)古著屋《ふるぎや》 -------------------------------------------------------  明治二年七月八日発行の明治新聞と云うのに、浜田藩の淀藤十郎と云うのが、古著屋《ふるぎや》からであろう、蚊帳《かや》を買って来て、それを釣って寝たところで、その夜の半夜《よなか》頃、枕頭へ女の姿があらわれた。それは白地に覇王樹《しゃぼてん》のような型を置いた浴衣《ゆかた》を著て、手に団扇《うちわ》を持っていた。淀は気のせいだろうと思ってそのままにしていたところで、その翌晩もまたその翌晩もやはり女の姿があらわれるので、友人にその事を話すと、友人が其の蚊帳を持って往って釣った。と、友人の家でも同じような女の姿があらわれるので、蚊帳を買った家へ返しに往った。するとそこの主翁《しゅじん》が、 「どうも不思議ですよ、どこへ売っても、五日とたたないで返して来るのですよ」  と云った。 底本:「伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典」学研M文庫、学習研究社    2003(平成15)年10月22日初版発行 底本の親本:「新怪談集 実話篇」改造社    1938(昭和13)年 入力:Hiroshi_O 校正:noriko saito 2010年10月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。