僕の国 スチーブンスン 新美南吉訳 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)窪《くぼ》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)小ばや[#「ばや」に傍点] ------------------------------------------------------- 光つて泉の湧くそばに 僕の小さな窪《くぼ》がある。  僕の丈ほどふかくない。 はりえにしだなど生えてゐる。 夏には夏の花が咲く。  黄つぽい花や赤い花。 泉を僕は海と呼ぶ あたりの丘を山と呼ぶ。  そんなに僕は小いのだ。 僕はつくつた舩や町。 僕はさがした洞や穴。  洞や穴には名をつけた。 あたりのものは僕のもの、 頭の上の雀でも、  泉の中の小ばや[#「ばや」に傍点]でも。 ここでは僕は王様だ。 僕は蜂どもうたはせる。  僕は燕をあそばせる。 ここより広い海はない。 ここより大きな原はない。  僕よりほかに王はない。 けれど日暮が来た時に、 母さんの声が呼びに来た。  「坊やお帰りごはんだよ。」 窪よさよなら僕のくぼ。 泉さよなら、よい水よ。  花もさよなら僕の花。 そしてお家にきて見れば、 何て大きな乳母だらう。  何て冷い部屋だろう。 底本:「日本児童文学大系 第二八巻」ほるぷ出版    1978(昭和53)年11月30日初刷発行 入力:菅野朋子 校正:noriko saito 2011年1月4日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。