虫喰い算大会 佐野昌一 ------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)鉛筆を嘗《な》めながら [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#ここから2字下げ] -------------------------------------------------------   自序  本書の中に、「“虫喰い算”大会」の会場が、第一会場から始まって第三十会場まである。われと思わん方は御遠慮なく、第一会場から出発して、智慧だめし、根だめしをなされたい。 「虫喰い算」とは、そもそもどんなものであるか。  簡単にいえば、「虫喰い算」とは、虫に喰われて判読できない数字を、推理の力によって判定する算数学のことである。  但し学といっても、頭の芯がじーんと痛くなり、苦しみのほか、何もないというような詰らないものではない。「虫喰い算」は非常におもしろく楽しいもので、一旦これで遊んだものは、終生「虫喰い算」のうれしい味を忘れ得ないであろう。私も二十年来これを愛好し、時にはこれを探偵小説に組立てて書いたこともあった(海野十三作『暗号数字』)。  本書の中には、「虫喰い算」の親類筋にあたる「覆面算」もいくつかおさめてある。「覆面算」というのは、数字が虫に喰われて穴があいているのではなく、文字または符号の覆面をつけている計算なのであって、みなさんたち学徒の名探偵は、その覆面を推理の力で叩き落して数字を剥がし出すのだ。  この両方をひっくるめて、ここに「“虫喰い算”大会」を開いてあるが、会場の初めの方はやさしいが、だんだん後の方の会場となるとむずかしくなる。その代り「虫喰い算」の魅力はだんだんに強く加わり、最後の第三十会場までが残り少くなるのが惜しまれるようになるであろう。第一会場を合格すれば第一階選士と名乗る。が、第三十階選士となるには、とてもたいへんである。  やさしい問題は中学校の一年生でも解ける。一等むずかしい問題でも、高校生なら解けるであろう。しかもこの「虫喰い算」の魅力は、大学教授をして鉛筆を嘗《な》めながら呻《うな》らせる魔力をも備えていて、実に神秘なところがある。  本書にはわざと空白を用意してあるが、そこでは部分的計算や、やりかえしをするために、せいぜい鉛筆を運動せられて然るべし。  本書には全部で百三十二箇の問題を集め得たが、これだけ集めるのにも、ずいぶん苦心し、且つ長い年月を要した。もっと多くの新しい問題を探し出したいと思うが、私が二十年で得たものはこれで全部である。同好の諸氏で御存じならば御恵投を煩わしたい。最後に本書は次ぎの各書を参考としたことを記し、謝意と敬意とを表する。 [#ここから2字下げ] F.C.Boon,“Puzzle Papers in Arithmetic” G.C.Barnard,“An Elementary Puzzle Arithmetic” F.F.Potter and F.C.Rice,“Common Sense Arithmetic” H.E.Dudeney,“Modern Puzzles” A.S.E.Ackermann,“Scientific Paradoxes and Problems” 藤村幸三郎著『新数学パズル』 [#ここで字下げ終わり]    昭和二十一年正月七日 [#地付き]海野十三 [#改段]   1 虫喰い算とは?  古い大福帳や証文や勘定書などがしみ[#「しみ」に傍点]という虫に喰われており、肝腎《かんじん》の数字のところが穴になっている。さあたいへん、困ったことになった。そういうとき推理の力でもって、その穴になった数字はこういう数字であらねばならぬと判別する。この算数学がいわゆる「虫喰い算」と称《よ》ばれるものである。  もちろん、一金五万円也、右借用候事しかじかというような一本建の数値だけがあってそのうちの数字が虫に喰われているのでは、探しようがないが、もしそれが加減乗除の運算書であれば、その一部が虫に喰われていても、前後の関係から推理によって正確に判別することができる。時には、数字の全部が虫に喰われていても、それらの数字の配列が分ってさえいれば、推理の力を積んでその全数字をいい当てることができる。  なお「虫喰い算」に似たものに「覆面算」と名附けるものがある。これは虫喰い算ではその数字が虫に喰われて穴があいているのに対し、「覆面算」では符号または文字になっているのだ。もちろん数字は1から9までの外に0の十箇だから、その覆面の符号または文字は十箇以内に限られる。 「虫喰い算」と「覆面算」と、どっちが面白いか。それは人によって違うが、私はどっちも面白いと思う。 「虫喰い算」を解く鍵は、普通の場合、まず初めに0の数字か、1の数字であらねばならぬところの穴を探し出すことにある。 「覆面算」では、同様のこともあるけれど、同じ文字又は符号がいろいろな関係で並んでいるところからして、ははあ、この文字はこっちの文字の二倍だなどという相互関係が見出されると、後は急に解けやすくなる。  虫喰い算の類を解くときは、徹頭徹尾推理の力で推していくところに興味と実益があるのであって、1かなあ、それとも2かなあ、それでなければ3かというふうに、いちいち代入法でやって行くやり方は面白くない。  虫喰い算は、序文にも述べてあるとおり、中級以上のものは一題一題が宝石のように尊く且つ愛《め》ずべきものであるからして、なるべくじっくりと解いていただきたい。一日に十題も二十題も解くことは、頭も疲れるし、それに虫喰い算の妙味が分らないと思う。  そこで本書の“虫喰い算”大会の設計に当っても、やさしいものとむつかしいものとを交ぜて四題ぐらいを一会場とすることとした。  なお、第一会場から第三十会場までのうち、初めの三分の一ぐらいは割合とやさしいが、それから先はだんだんと複雑難解なるものが入って来、それだけに推理に成功すれば嬉しさがこみあげる。第二十会場以後となると、虫喰い算の愛好者にとっては、こたえられないほどの歓喜と興奮とをもたらすことであろうと思う。   2 やさしい虫喰い算とその解き方  まずやさしい虫喰い算の方から、その解き方を述べて行く。 【例題一】 次頁のような加え算がある。四角の穴は、いわゆる虫の喰ったところである。そういうものが、この問題には四つある。これを推理で探しあてるのだ。   1□92   29□1   971□ + 2□17 ――――――  17592  まず右端の縦列の□から考えて行く。これは一の位である。2と1と□と7とを加えた結果、その値の一位は2となることが、この計算によって分っている。□は別として、分っている2と1と7とを加えると10[#「10」は縦中横]となる。しかるに、一の位の合計の一位の数字は0ではなくて2である。するとこれは□が0ではなく、2であることが推理される。そこでその2を書き入れ、左上のようになる。   1□92   29□1   9712 + 2□17 ――――――  17592 次は十の位だ。一位から1が送られていることを忘れてはならぬ。やはり□が一つある。それを別にして、分っている数字9と1と1と、一位からくりあがった1とを加えると、その結果は12[#「12」は縦中横]となる。しかるに、十位の合計の十の位は9となっていて、2ではない。これはつまり十位の□を加えてないからこうなるわけだから、9から2を引いて7、この7が□の数字と決まる。そこで計算を整理すると右下のようになる。   1□92   2971   9712 + 2□17 ――――――  17592  その次は百位だ。これは今までのようには行かない。□が二つもあるからだ。分っている9と7とを加え、それに十位から上がってきた1を加えて17[#「17」は縦中横]となる。この縦列の合計の数字は5であるから、□と□との合計は8であるかもしれず、18[#「18」は縦中横]であるかもしれない。さあ分からなくなった。  が、困ることはない。もう一つ上の千位の数字を見ると、この縦列には□がない。1と2と9と2を加えて14[#「14」は縦中横]となるが、下の合計では17[#「17」は縦中横]となっている。すると百位から千位へ送られた数字は17[#「17」は縦中横]から14[#「14」は縦中横]を引いた3だと分る。  そうなると百位の二つの□の和は8ではなくて18[#「18」は縦中横]であらねばならぬ。18[#「18」は縦中横]でないと、3は上ってこない。  これで一応解けたわけだ。□と□の合計が18[#「18」は縦中横]となる関係があれば、どんな数字でもいいのだ。いや、どんな数字というわけにもいかない。二数字の和で18[#「18」は縦中横]なら、いずれも9である外にない。なぜなら9以上の数字はこの縦列に存在しないわけで、ぜひとも9でなければならないのだ。そこで答は上の如く決まった。   1992   2971   9712 + 2917 ――――――  17592  同じ加え算でも、「覆面算」ふうなものが加わった場合がある。次の例題がそれだ。 【例題二】 Nという文字で現わされた数字が五箇所に入っている加え算である。もちろん、どのNも同じ数字である。   2N8   2N2   88N + N2N ―――――  2164  この配列を見ると、どこから手をつけていいか分らぬようであるが、しばらく見ていると鍵が発見される。それは一位の四数字の和が8と2と二箇のNであり、また十位の四数字も同じく8と2と二箇のNである点だ。しかもこの合計を下列でみると、一位では4だし、十位では6となっている。これだ、鍵は。  これは一体どういうことを意味するか。一位から十位へあがった数字は、6から4を引いた2であることを意味する。  どうして2をあげることができるか。8と2を加えて10[#「10」は縦中横]だから、これでまず1があがる。その外に二つのNがあるから、この和で1があがらねばならぬ。すると二つのNの和は14[#「14」は縦中横]である。よってNは7だということになる。  うそだと思ったら五箇のNに7を代入して検算してみるがよろしい。こういうやり方では、百位のNにはついに手をつけないで解くことができた。一刀両断の快味に、ちょっと似ている。  引き算を一つやってみよう。やさしいものであるが……。 【例題三】 これは国民学校の一年生でもできるであろう。一位からやって行く。  □84562 − 8□1□3 ―――――――  6□7□7□  2から3は引けないから、十位から10[#「10」は縦中横]を借りて、12[#「12」は縦中横]から3を引いて9が出る。  次は十の位だ。6は既に5に減っている。それから□を引いて7が出るというからには、この□は逆算して8でなければならぬ。この際、百位から10[#「10」は縦中横]を借りた。  次は百位だが、被減数の5は、先に1を右へ貸したから4となっている。だからそれから1を引くと3であるから、□は3と決まった。  次は千位。これはわけなしだ。□は7であらねばならぬ。但し上から10[#「10」は縦中横]を借りた。  万の位では、被減数の8は下へ1を貸したので、実は7である。それから8を引けば9である。□は9と決まる。  十万の位の□は7である。なぜなら下へ1を貸してあって、答は6となっているから、7にちがいない。これで出来た。上のようになる。  784562 − 87183 ―――――――  697379  次は掛け算の場合である。掛け算だからといって別にやり方が根本的にちがうわけではないが、一つの方針をごらんにいれておきたいと思う。 【例題四】 この問題を見ると、虫喰い穴が八箇所もある。こんなに穴だらけで、果して推理の力で解けるだろうかと不安になる。    97□ ×   □8 ――――――   □□□0   9□□ ――――――  175□0  しかししばらくこの計算をながめていると、そのうちに有力なる手懸りが発見されるのだ。そこが興味津々たるところだ。  すなわち、まず第一の手懸りは、乗数の十位の穴は、1であるということだ。なぜなれば、上から四段目を見ると、三桁の数であり、その百位は9に始まっている。しかるに被乗数を見ると、やはり三桁であり、百位の数字は9である。すると乗数の十位は1であらねばならぬことが分る。そうなると上から第一段目と第四段目とは同じ数である。そこで上のように穴を二つふさぐことができた。    97□ ×   18 ――――――   □□□0   97□ ――――――  175□0  第二の手懸りは、乗数の一位の8を、被乗数の一位の□に掛けると、その答の一位は、8の字の下にあるとおり0となるのだ。そういう場合、□はどんな数字でもいいというわけには行かぬ。すなわち□は0か5かのどっちかであらねばならぬ。そうでないと第三段目の右端の数字は0とならない。  では、0か5か、どっちであるか。それを判定する段取に移る。  □は0ではない。なぜなら、第三段目は、7760 となり、第四段目は 970 でそれを加えると、第五段目のように 175 云々とはならず、174 云々となって勘定が足りない。そこで被乗数の一位の□は、5であらねばならぬと決定する。  □を5として計算してみると、正しく右頁左下の如く、ちゃんと勘定が合うのである。    975 ×   18 ――――――   7800   975 ――――――  17550  次は、割り算である。割り算は虫喰い算としての面白さを十分に備えている。すぐれた虫喰い算は、たいてい割り算の形をとっている。次にあげたのは、やさしい割り算の虫喰い算である。 【例題五】 この問題では、二桁の除数が穴になっているし、答も十位が穴だし、計算の中にも六箇所の穴があいている。     □3   ____ □□)949    □□   ――――    □□9    □□9   ――――      0  なおよく見るのに、肝腎の除数が全然不明であり、またその答も半分しか判明しておらず、これではどうにも手のつけようがない――ように思われる。  が、しばらく気を落着けて、じっとこの運算書を眺めていると、うまい手懸りがだんだんと見つかってくるのである。まず第一に除数の一位の穴が3であることに気がつく。そのわけはこうだ。除数に答の一位の数である3をかけたとき、その計算の一位の数は9となっている(上から五段目の右端)。つまり、3に或る数(除数の一位)をかけて、答の一位に9が出てくるためには、その或る数は3の外にないのだ。33が9であるからだ。そこで上のように、穴を一つうめることができた。     □3   ____ □3)949    □□   ――――    □□9    □□9   ――――      0  さて次に、答の十位の数は、3よりも少い2か1かのどっちかであることに気がつく。なぜなれば、除数と答の一位をかけた計算は、上から五段目であって、三桁の数□□9 だ。ところが、上から三段目の、答の十位をかけた計算は□□となっていて二桁の数である。すなわち、答の十位の数は2か1かのどっちかに制限される。これで余程探求の範囲は狭くなった。  一方、除数の十位の□は、4か、4よりも大きい数でなければならぬことに気がつく。なぜなれば、上から五段目のところで、除数の□3に、答の一位の3をかけると、一位は9となる。次に除数の十位に答の一位の3をかけたものは、百位と十位との二桁ものとなるが、これは除数の十位の数が3以下では二桁とならない(つまり、33が9や23が6では二桁とならない。どうしても34の12[#「12」は縦中横]以上でなければならぬ)。そこで除数の十位の穴は、4か、4よりも大きい数だと分る。  そこで今度はもう一度、答の十位の計算、すなわち上から三段目へ戻る。前に述べたように、答の十位は1か2かの何れかである。ところが、これが2であっては、今しがた導き出したところの、「除数の十位の数は4以上」という関係がぶちこわされる。仮りにそれが最低数の4とすれば、答の十位の2をかけると 43×2=86 となるから、被除数の94[#「94」は縦中横]からこれを引くと、残りは8となって一桁となる。すなわち上から第四段目は□□9 とはならずして□9 の形となり、桁があわぬ。従って答の十位は1か2かということであったが、これは1であらねばならぬと確定する。さあこれで、大体解けた。今まで解けたところを穴に入れて書いてみると上のとおりになる。     13   ____ □3)949    □3   ――――    □19    □19   ――――      0  これでみるとおり、答の十位が1と決まれば、第三段目の右端は当然3である。するとこの下は、4から3を引くのだから1であり、その1の下も、第六段目が0だから、同じく1であらねばならぬわけである。  第五段目に於いて、十位に1が出る計算で、3の倍数である謎の数字(すなわち除数の十位の数)は何か。順番はこの問題にうつる。これはすぐ分る。それは7である。37の21[#「21」は縦中横]であるからだ。よって除数の十位の数は、7だと分る。これで重要なところはすべて解けたわけである。念のために 73×13 で、果してこの計算がうまく合うかどうかやってみる。すると上に示すように十分満足することが分る。推理力万歳! である。     13   ____ 73)949    73   ――――    219    219   ――――      0  やさしい問題の解き方はこのぐらいにして、次はもっとむつかしいものの解き方を二つ三つごらんに入れることにする。   3 高級な虫喰い算とその解き方  高級だといっても、解き方の根本に別にかわったことがあるわけではない。ただむつかしい点は――従って大いに興味のある点は――どこに手懸りが隠されているか、どこから解き始めたら一番うまく行くかというところにある。すぐれた宝玉のような問題は、このように鍵の隠し場所が極めて意外なところにあり、そしてそれにぶつかって解くと、あとは全部ががらがらがらと崩れるように解けて行くようなのを指していうのだ。  それを解きにかかる皆さんは、名探偵の明智小五郎か、シャーロック・ホームズか、それともファイロバンズか、エラリー・クイーンか、とにかくせいぜい智能をふるわれたい。  そこで例題の解説にうつる。 【例題六】 これは「覆面算」である。いろいろなアルファベットが並んでいるが、これはもちろん二十六種の文字が並べてあるわけではなく、皆で十種しかない。つまりCMLQTPAINSの十種である。この十種の覆面者のどれが1234567890のどれであるかを、これから推理でもって探偵しようというわけである。       QCN    ______ CML)QTPAI     QIS     ―――――      QPA      CML      ――――      CCCI      CSNS      ――――        MI  ちょいと見たところでは、何が何だか見当がつかず、まるで突然火星国へ不時着したような当惑を感じ、取りつく島もなさそうに思われる。しかし、いつもいうとおりに、名探偵らしくじっくりこれを観察していれば、やがて秘密の扉を開くべきすばらしき鍵を発見することができ、思わずにっこり微笑まるることであろう。  さて、いよいよこの覆面算の探偵に移ろう。  名探偵が、第一に目をつけたところは、上から五段目の CML である。これは除数である CML と全く同じではないか。大発見、大発見!  然らば、この五段目の計算を導くに至った答の十位の数Cは1であらねばならぬ。そうですねえ。すなわち計算の中のCを悉《ことごと》く1に書き改めて、上の如くに整理をする。       Q1N    ______ 1ML)QTPAI     QIS     ―――――      QPA      1ML      ――――      111I      1SNS      ――――        MI  さあ、こんどはどこに第二の鍵を発見すべきであろうか。うん、これだ。三段目の右端のSが曲者である。このSの上はPである。またこのSの下も同じPである。PからSを引いて答はPだ。P−S=P。これは変な関係だ。いや変ではない。こういう関係はSが0のときのみに成立つ。これでいい。第二の鍵はこのSが0であることだった。  そこで運算書の中のSを0として再び書き改める。これで大分明るくなった。  いや、まだ安心するのは早い。前途にどんな難関が横たわっているか分らない。       Q1N    ______ 1ML)QTPAI     QI0     ―――――      QPA      1ML      ――――      111I      10N0      ――――        MI  いよいよ第三の鍵の発見に掛る。さあ、それはどこにあるか。今度はなかなか手ごわい。ほほう、これは気がつかなかった。これらしいぞ、第三の鍵は!  今求めた三段目の「Sは0なり」のところであるが、ここに0を書き入れたについては、除数の一位の数のLと答の百位の数のQをかけた結果である。つまりLとQとかけて、その答の一位が0となったのである。そういう場合は、LとQとのいずれかが5であり、他の数が偶数でなければならぬ。(誰です、LかQが0の場合でもいいじゃないかといった方は……。0は既に出ていますよ。Sは0であると、さっき導き出したばかりです)――さて、これだけでは決定的でないが、もう一つ目をつけるべきところがある。それは七段目の右端の数字も、同じく0であることだ。この0は、除数のLと、答の一位の数のNとを掛け合わせた結果出てきたのである。するとさっきと同じ理窟から、LとNとのどっちかが5であり、偶数であらねばならぬこととなる。  そこでLが5であることが確定される。なぜなれば、前にはLとQのいずれかが5か偶数かとあり、今またLとNのいずれかが5か偶数かとなったからには、この両条件を共通に満足すべき答としては、Lが5である場合しかない(また聞えましたよ、誰ですか。Lが偶数であってもいいではないかといいましたね。とんでもないことです。Lが偶数なら、初めの条件によりQは5となります。すると後の条件のとき、つまりLとNのいずれかが5であり偶数であるというときには困ってしまうではありませんか)。とにかくこうしてLは5、そしてQとNとは偶数だということが分った。早速これを書き入れると上のようになる。       Q1N    ______ 1M5)QTPAI     QI0     ―――――      QPA      1M5      ――――      111I      10N0      ――――        MI  このへんで貴君が「虫喰い算て面白いなあ」と心臓をどきどきされたとしたら、それは既に虫喰い算の「鬼」が貴君にのり移ったことの証拠である。一旦この「鬼」にとりつかれたら、お気の毒ながら(?)、貴君はもう一生涯、虫喰い算のファンとして離れられなくなる。決して嚇《おど》かすわけではないが、事実がそうだから仕方がない。  余計な話はやめて、次へ進む。第四の鍵はどこにあるか。四段目のQであるが、この下に1がある。その下にも1がある。するとQから1を引いて1が出たわけだ。するとQは1と1との和の2であるか、それともQは下位へ1を貸してあって、本当は3であるかもしれないと臆測される。つまりQは2又は3であらねばならぬと。ところが、どっこい、Qは2であらねばならぬ。3であることは許されない。なぜならば、QとNとは共に偶数なりと、さっき決定したばかりだから。       21N    ______ 1M5)2TPAI     2I0     ―――――      2PA      1M5      ――――      111I      10N0      ――――        MI  第四の鍵は、比較的楽であったから、あとはもういいだろうと安心すると、たいへんな間違いが起る。  ここで六段目と七段目の真中を見る。11[#「11」は縦中横]から 0N を引きMが残りとなっている。この関係を書き直すと N+M=11 となる。前にNは偶数と分かっているから、Mは奇数でなければならぬ。  奇数といっても、既に1と5とが決まりずみだから、Mは3、7、9のどれかであらねばならぬ。  ところがMについては、もう一つ制限がある。それは三段目のところで、除数の 1M5 に2をかけて 2I0 となっているが、Mは4か、4より小さい数でなければならぬ。なぜならMが5以上なら計算は二桁の数となり、三段目の左端は2とならずに3に変ってしまうからである。Mは4か、4よりも小さい数でなければならぬという条件を、前に導き出したMは3か7か9のどれかであるという条件に加えると、当然Mは3であるしかない。これが第五の鍵だ。  さきに N+M=11 という関係が明かになっていたから、このMを3に置きかえると、Nは当然8だと分る。  それで除数は 135、答は 218 であると分った。もうこれで後はがちゃがちゃ解ける。すなわち次頁に示すような計算になって、この問題はりっぱに解けたこととなる。名探偵の勝利である。さあ、シャンパンでも抜こうかという順序になるわけだ。シャンパンがなければ鉄管ビールで間に合わせておけ!       218    ______ 135)29467     270     ―――――      246      135      ――――      1117      1080      ――――        37 C=1 M=3 L=5 Q=2 T=9 P=4 A=6 I=7 N=8 S=0  次は非常にむつかしい問題の一例として、一数字の外は全部穴ばかりという例題を出してみる。こんな問題が推理だけで解けるとは思わない人が少くないであろうから、推理でちゃんと追込んで行けるというところをお知らせしたい。 【例題七】 一目見ただけでこれが難問題ということがはっきり分る。分っているのは、答の千位の数字が7だというだけである。この穴を埋める答がもしも出たとしたら、それは出鱈目《でたらめ》のまぐれ当りか、それとも初めから問題を知っていたせいだろうと邪推する人があるかもしれない。しかしそうではなく、やはり推理の力でどんどん押していって、これが解けてくるのである。もちろん大骨が折れる探偵事件であるが、さように大骨が折れるところが、また虫喰い算ファンにとって、実にこたえられない快味である。では取懸ることとしよう。        □7□□□    _________ □□□)□□□□□□□□     □□□□    ―――――――――       □□□       □□□       ――――――       □□□□        □□□       ――――――         □□□□         □□□□         ――――            0  まず第一着手は0を探すこと。これは容易である。答の十位の□は0である。なぜなれば、八段目をよく見ると一度に上から二桁下りている。だから答の十位は0であることは歴然である。そこで□の中に0を書き込む。  次は、答の万位と一位は、共に7より大なる数字だと分る。つまり8か9であろう。なぜなら、7の場合は、計算すると五段目のとおり三桁であるのに、万位の計算である三段目も、一位の計算である九段目も、共に四桁の数字である。であるからして、どっちも7より大きい8乃至《ないし》9であることが分る。  それから次は、六段目の左端に目をつける。これは1であらねばならぬ。七段目で一桁下って引いてあるが、その下にも何もないのであるから間違いなくそれは1である。  それから今度は、二段目左端の除数の百位の数字が1であらねばならぬと判定を下す。なぜなれば答の千位の7を、三桁の除数に掛けたものが、五段目に出ている如く、やっぱり同じ三桁であるからには、除数の百位の数字は1であらねばならぬ。もし2以上であったら四桁以上になるから不合理だ。  三段目左端と、九段目左端は、共に1であらねばならぬ。なぜなら、除数の百位の数字が今1と決まった以上は、この四桁の数字の左端はどんな数字を掛けようが1以外にはなり得ない。  すると八段目左端も1であらねばならぬ。なぜなれば、この八段目は九段目と同一であるからである。  まあこの辺で、原運算を整理して下に示して置こう。但し▲は、8か9かのどっちかだということを示す。        ▲7□0▲    _________ 1□□)□□□□□□□□     1□□□    ―――――――――       □□□       □□□       ――――――       1□□□        □□□       ――――――         1□□□         1□□□         ――――            0  こうしてやっと七八つの穴は解いたが、のこりの穴は三十二ホールだ。前途遼遠の感を深うする。  さて、元気を出して次に掛る。  二段目の除数の十位の数字は2以下である。つまり2か1か0であらねばならぬ。なぜなれば、五段目左端は7か、或いは8故(これが6以下では六段目の左端は1とはならず[#「これが6以下では六段目の左端は1とはならず」はママ。五段目は 1□□の7倍だから五段目左端は7以上になります。]、又9であれば0となるから不合理)、除数の十位の数字が2と1と0以外では五段目左端が7或いは8とならない。  ところが、なおよく検討すると、それが0では不合理で、2か1かのどっちかに狭ばめられる。なぜなら、それが0では、除数は 10□ となるわけだから、これに答の万位の数字と思われる8を掛けようが9を掛けようが、共に三桁の数となり、三段目や九段目に示されるような四桁の数とはならないからである。  次に、一段目の答の百位の数字は8である。なぜなれば、除数は既に追込まれたとおり、12□か 11□のどっちかであるが、それに百位の数字を7と仮定して掛けたのでは 84 又は 77 となり、六段目四桁目の 1□□□からそれを引いて、その残りが八段目の左端の1の如く二桁も下るためには不都合である。これはどうしても8でなければ成立たぬ。  答の百位の数が8だと決まれば、答の万位の数及び一位の数は共に9でなければならぬ。そのわけは8でさえ三桁である。しかるに万位のも一位のも共に四桁であるから、これは9であるしかない。  これで、答の数は全部判明した。すなわち□7□□□は 97809 であると決まった。  なお、七段目左端は9である。なぜなれば、これを8だとすると、その下に何か数字が残る、しかし実際にはこの下には何にもないのであるから、9であるしかない。  これだけのことを計算に書入れてみると下のようになる。        97809    _________ 1□□)□□□□□□□□  ↑  1□□□  2 ―――――――――  又    □□□  は    □□□  1    ――――――       1□□□        9□□       ――――――         1□□□         1□□□         ――――            0  さあ、あと一息である。  除数の十位の数は2か1かのどっちかであると、既に追つめられている。この問題を片づけるのは比較的楽である。これまで当ってきたところから考えると、それは1であるよりも、2である方がずっと有力である。そこでこれを仮りに2と考える。  すると、除数は 12□の形となったわけ。  そうだとすると、除数の一位の数は、4又は4より小さい数でなければならぬことになる。なぜなれば、七段目に於いて、124×8=992 であり、それが5以上では 125×8=1000 となって四桁になる。しかるに七段目は三桁であるから、除数の一位の数は4、又は4より小さい数字であらねばならぬ。  これを4とすると、除数は 124 となる。これと先に判明した答の 97809 とで、この計算を行ってみると右のようになる。        97809    _________ 124)□□□□□□□□     1116    ―――――――――       □□□       868       ――――――       1□□□        992       ――――――         1□□□         1116         ――――            0  このあとは逆にやって行くと穴の中は全部数字で埋められるが、その結果はすこしも不都合がなく下のようになる。これが答だ。やれやれ骨を折った。        97809    _________ 124)12128316     1116    ―――――――――       968       868       ――――――       1003        992       ――――――         1116         1116         ――――            0  解法は、何もこれ一つに限らず、もっといい別の方法があってもいいわけで、よく考えて頂きたいものである。  このへんで例題の解説は打切ることとする。   4 “虫喰い算”大会について  いよいよこれから「“虫喰い算”大会」を開催する。第一会場から第三十会場まである。一会場につき、いずれも四題ぐらいずつが掲げてある。じっくりとぶつかって、推理の力により答を出して頂きたい。  空白の頁は、こまかい計算をしたり、またやり直すのに便利なために明けておいた。  一日に一会場以上は進まない方がよろしいと思う。どんどん通ってしまっては、頭も痛くなるであろうし、珠玉のような虫喰い算の味が十分は味えないと思う。  四問題のうち、初めの二問題か三問題は比較的やさしいが、後に出て来るものは大分むつかしくなっている。  また最初のうちの会場は、わりあい楽であるが、会場が進むにつれて、だんだんむつかしくなって来る。第二十会場あたりからあとは、相当に骨が折れて頭から湯気を出されることと思う。その代り十分骨折り甲斐のある虫喰い算の魅力を満喫せられることであろう。  なお、これらの答は、わざとつけてない。答を繰ってみて、「ははあ、なんだこの□は9か」などとやられては、虫喰い算の妙味はなくなってしまう。もしやり方に詰ったら、その前の例題を復習して、虫喰い算の解き方のこつ[#「こつ」に傍点]を会得せられ、それからもう一度問題と取組んでいただきたい。  第一会場をパスすれば、第一階選士となられる。かくてどんどん進んで、第三十会場をパスすれば、当然第三十階選士として最高の名誉を獲得せられるわけで、メダルでも出したいところであるが、あいにく手許にないのは遺憾である。  第三十階選士になったからといって、この虫喰い算の書はつまらないものと化したわけではない。また改めてもう一度第一会場からくりかえしてみられると、また新なる感興を覚えられるであろう。虫喰い算は、一度や二度解いたから、そのあとはもう興味索然とするような、そんな薄っぺらなものではない。こうして二度三度四度とやりかえすために、本書にインキで書き込むことは控えて、なるべく軟い鉛筆で記入されたいものである。  では会場を開きますぞ。さあさあ世界にめずらしい「“虫喰い算”大会」の会場は、こちらが出発点でございます。自信と興味のある方は、どんどんこの門から御入場なされませい。どうぞ、お先へ、お先へ……。   “虫喰い算”大会 第一会場  さあ、こちらが第一会場です。“虫喰い算”大会の出発点です。加え算、引き算、掛け算、割り算と全部揃っています。 (4)は、五つの穴から成立っている数を、11[#「11」は縦中横]で割った答が、穴の下に出ていますが、残りがあることに御注意のこと。(5)はこの会場で一番むつかしいものですが、よく見ていれば、どこから解いたらいいか分ります。(分らない方に、智恵をちょっと貸しましょうか。8に如何なる数をかけたら、一位に4の数が出るか、出ている桁は三桁ですから……そこまでいっては興味がなくなりますね、ごめんなさい) (1)★    □937      8□     109  + 4□75 ―――――――    74□5 (2)★   8□74□  − 6□23 ―――――――   □11□6 (3)★   □□□□1□ ×      7 ――――――――  □999998 (4)★ 11)□□□□□    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     7996 残り9 (5)★      □□   _____ 28)1□□4     □□   ―――――     □□4     □□4    ――――       0   “虫喰い算”大会 第二会場  第一階選士となられた貴下の御来場を歓迎します。どうぞ本会場も見事にパスして、第二階選士の名誉を獲得せられんことを希望いたします。  本会場にも五問題が配置されてあります。 (1)はやさしい。(2)ではちょっと頭をおひねりになるでしょう。(3)もへいちゃら。(4)は、ちょっとむつかしそうに見えて、案外やさしいです。右の方の或る数字と或る数字に注意力を向ければねえ。(5)は面白い問題です。三つのCと、それからBによく御注意を……いや、いわない方がよかったかなあ。 (1)★    526  − □7□ ――――――    347 (2)★   AB2DEF ×      2 ――――――――   2DEFAB (3)★ 9)□□□□□   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    4140 残り8 (4)★    823 ×   1□ ――――――   □□□5   823 ――――――  □□□□5 (5)★       DC    _____ ABC)DEDC     DAB    ―――――      CDC      CDC     ――――        0   “虫喰い算”大会 第三会場  こちらが第三会場です。今までとちがって少しむつかしくなりますよ。 (1)の穴は、8以内の数字をあてはめてください。(2)は楽ですね。(3)は、いささか骨っぽいですぞ。AとCを掛けて三十いくつになるためには、AとCはどんな数でなければならぬか。7と3は既に決まっているからこれは除外です。また0でもあり得ない。3以下の小さい数字でもあり得ない。だんだん範囲が制限されてきますね。それにもう一つ考え合わせます。最後のところで、3にAを掛けると、一位はCとなる。そういう特定の数はたくさんありませんね。……ここらでお分りになるでしょう。(4)は大したことありません。(5)は面白いです。 (1)★    2344    □□□□  + 5720 ――――――――   13252 (2)★    □7□6□  ×     7 ―――――――――   3□29□6 (3)★ A)3B7AC   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    CB73 (4)★     AB□A  ×    AB ――――――――     □□□□    □□□9 ――――――――    □□□B□ (5)★      1□2   ______ □□)□□□64     □□    ―――――     246     □□1    ―――――      □□4      □□4    ―――――        0   “虫喰い算”大会 第四会場  前会場で第三階選士を獲得なされて、おめでとうございました。しかし、前会場は、ちょっとこたえたようでございますね。  本会場は、その埋合わせに、比較的やさしく且つ面白いものを並べてあります。(5)に於いては、答のところにAが二つありまして、そこに……。  喋りすぎるぞ、というお叱りです。はいはい、では沈黙いたします。 (1)★    674□     2□7      63  + 2□□8 ―――――――   □□1□3 (2)★ 7)□□□□□   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    6618 残り1 (3)★    CB8A6  ×     A ―――――――――   21CB8A (4)★    2N8    2N2    88N  + N2N ―――――――   2164 (5)★      A7A   ______ □□)1□□□□    1□□    ―――――      □□      □□    ―――――      □□□      □□□    ―――――        0   “虫喰い算”大会 第五会場  いらっしゃい、ここが第五会場です。  いかがですか。大分面白くなりましたね。本会場も五問題を用意してございます。 (1)、(2)、(3)は、居睡りしていてもお出来になりましょう。 (4)は?“この計算は間違いじゃないかなあ、三桁の数をかけてあるのに、計算は二桁しか出ておらんぞ”と、誰方か喚《わめ》いていますが、やれやれお気の毒。 (5)は三段目の4に、お目をとめられて……。いや、余計な口出しでしたかね。 (1)★    □□7□4□  ×      7 ―――――――――   1□2□8□1 (2)★    □84562  −  8□1□3 ―――――――――    6□7□7□ (3)★    □2□  _____ 8)3□24 (4)★      WTFR  ×    STX ―――――――――      XRSY    SWQY ―――――――――    SYRQSY (5)★      A□1   ______ 1A)□56□□    □4□   ――――――     □□□     □□□    ―――――       1□       1□      ―――        0   “虫喰い算”大会 第六会場  既に第五階選士になられしことなれば、その実力に敬意を表し、本会場以後に於いては、それとなくヒントを袖の下からちらりと見せるようなことはよしましょう。  ささ、どうぞお進み下さい。 (1)★     □□57□  ×      9 ―――――――――    3□1□02 (2)★    5483□  − □□2□□ ――――――――     9639 (3)★ 6)□□□□□   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 9) □□□□  残り1   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     470  残り1 (4)★      3□□□  ×     9□ ―――――――――     2□□□1    30□17 ―――――――――    33□□□1 (5)★        7F    ______ ADC)BAEFC     BDG8    ――――――      DEEC      1EEC    ――――――         0   “虫喰い算”大会 第七会場  はい、こちらが第七会場です。  だんだん面白い問題が出て来ます。 (1)も(2)も(3)も、あまり面白くない――とおっしゃいますか。やさしすぎて面白くないのですか。そうでしょう、もう貴下は第六階選士なんですからねえ。しかし何事にも、ウォーミング・アップということが必要でございますと存じます。 (4)と(5)は、たいへん面白い。おほめにあずかって恐れ入ります。 (1)★    2157    □□□□  + 1625 ―――――――   10342 (2)★     □□□  ×   □7 ―――――――    3□□4   5□□□ ―――――――   □□□□□ (3)★    A7  ____ 3)1A1 (4)★     ABCD  ×   DCB ――――――――     BDKG    CHEB   DFCK ――――――――   LCCEGG (5)★       □74    ______ 31□)□□6□□     63□    ――――――     □□8□     □□□□    ――――――      □□□□      □□□□    ――――――       □18   “虫喰い算”大会 第八会場  第八会場はこちらでございます。例によって問題は五つ並べてございます。どうぞお気のままにお進み下さい。  え? 前のように喋ってくれとおっしゃるのですか。それは困りましたね。本会場の問題はそんなにむつかしかありませんよ。 (4)ですか。これはわけありません。六段目でBが何者かと分れば、除数の十位も分ってあとは……あとは、むにゃむにゃ。 (5)ですか、貴下が本当に助け舟をお求めなさるのは。割る数も商も皆、穴で、手がかりがないとおっしゃいますか。なあに、これもやさしいですよ。五段目の数字は何と何とを掛けると出るべき数か、因数の知識をちょいと……叱られぬ先に黙りましょう。 (1)★    3456□8     □324□  + □6□123 ―――――――――    959045 (2)★    4□□□4  − □947□ ――――――――    26205 (3)★     7□4□  ×    53 ――――――――    23□□7   38□□□ ――――――――   410□□7 (4)★     STP   _____ BT)KDNG    PK   ―――――     FN     TN    ――――     BGG      NB    ――――       N (5)★       □□□    ______ □□□)□□□□□     □□□    ――――――     □□□□     1851    ――――――      □□□□      □5□□    ――――――         0   “虫喰い算”大会 第九会場  やっぱり叱られてしまいました。余計なお喋りをして、興味を削《そ》いだというので……。それなれば、私のお喋りに対して耳に蓋をして下さればそれで目的は達せられる筈ですが……いや、ぐちは申しますまい。  いよいよ第九会場となりました。(5)に取組んで、虫喰い算の味を満喫していただきましょう。 (1)★     45□7□      23□1     □2931  +   □246 ―――――――――    104196 (2)★    57  ____ 3)A7A (3)★    1ABC57  ×      3 ―――――――――    ABC571 (4)★     □3   ____ □□)949    □□   ――――    □□9    □□9   ――――      0 (5)★        BQM    _______ XVS)XQARAM     XMAB    ―――――――       CQA       BBA      ―――――        VAM        VAM       ――――          0   “虫喰い算”大会 第十会場  ここがもう第十会場になります。  全三十会場の、ちょうど三分の一の境界線に達したわけです。本会場をパスなされば、すなわち第十階選士です。  満々たる自信をもって、本会場を楽々とパスされることと信じます。しかし油断は禁物ですぞ。この後には山あり谷あり流れあり、嘘だと思ったら、次の会場へ。そこで目をお廻しになりませんように。 (1)★[#「(1)★」は底本では「(1)」]   1□92   29□1   971□ + 2□17 ――――――  17592 [#「17592」は底本では「17392」。【例題一】と同一と考えられるため、【例題一】に合わせました。] (2)★ □)56□96   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    81□8 (3)★     97□  ×   □8 ―――――――    □□□0    9□□ ―――――――   175□0 (4)★    3N  ____ N)259 (5)★        □□□    _______ □□□)□□□□□1     □□89    ―――――――       75□       □□□      ―――――        □81        □81       ――――          0   “虫喰い算”大会 第十一会場  第十一会場でございます。どうぞ、ごゆるりとお楽しみ下さい。いや、皮肉をいったつもりではございません。  ブーン先生の“虫喰い算集”は、なかなか数も多く、傑作も集っており、私は最も尊敬しております。先生はこの虫喰い算を生徒に与えて、大変楽しく算数を勉強させました。ところが生徒は、これが縁となり、虫喰い算がすっかり気に入ってしまい、遂には先生と一緒に問題を考え出すまでになりました。そういう生徒さんの作った問題が、会場の方々に陳列されています。 (1)★ □)81□8   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    □0□ (2)★     3□AB  ×    □B ――――――――    □6□□A    □□□□ ――――――――    □□□□9 (3)★   56N   N65   6N5   5N6 + 65N ―――――  3240 (4)★       □□□    ______ □4□)9□□□5     □□□    ――――――     2□□□     □□□□    ――――――       2□□       □□□      ――――         0 (5)★        GQRDQN  ×      SLADE ―――――――――――――       GGGTAQN       DERLTT      EALDTT     ASRELN    LDTNNT ―――――――――――――    ARLDQSQAQN   “虫喰い算”大会 第十二会場  こちらが第十二会場です。どうぞお入り下さい。  およそ、この虫喰い算といわず、いわゆる数学パズルと称せられる興味深い問題を古くから研究し、そして集録して早くから著書として世に紹介したのは、イギリス人エッチ・イー・デュウデニー氏でありましょう。今日までに紹介された数学パズルで、このデュウデニー氏の本の中にないものは、殆ど稀だといってよいくらいであります。 (1)★ 7)3□5□6   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    □93□ (2)★     □52□  ×    3□ ――――――――     □0□8    4□□2 ――――――――    4□7□8 (3)★    A3B  − 3BA ――――――    189 (4)★     EAK   _____ AE)ETFG    EK   ―――――     AF     AE    ――――      KG      KG     ―――       0 (5)★         2□□□     ________ 1□5□)□□□□□□6      □7□□     ――――――――       □□□□       5□□□      ―――――――        □□□□        8□□□       ――――――        □□□□□        □□□5□       ――――――            0   “虫喰い算”大会 第十三会場  本会場から、問題の数は四つになりました。数は一つ減りましたが、問題の質は格段にむつかしくなりましたから、十分歯ごたえがあると思います。  歯ごたえがありすぎる! ああ、そうですか、そうですか。  でも、もう第十二階選士になられたのですから、これくらいの歯ごたえがないとお気の毒に存じまして、かくの通り……。 (1)★     □□7□□     □10□9      □006  +     □9 ―――――――――    2□□□□1 (2)★     285  ×   □□ ―――――――    1□2□    □□□ ―――――――    □9□□ (3)★      □7□   ______ □□)17424     □□   ――――――     □52     □□□    ―――――      □□4      □□4     ――――        0 (4)★       PLPR    _______ QSV)TMBLRD     SBT    ―――――――      RSL      QSV     ――――――       VPR       SBT      ―――――       LDDD       LBLD      ―――――        LBM   “虫喰い算”大会 第十四会場  第十四会場はこちらです。いよいよ歯ごたえがございますよ。 (2)は、今までにない分数の問題です。慣れないものにぶつかると、ちょっと面喰います。面喰うところが、なかなかいい気分であります。そうは思われませんか。 (3)も面白く、(4)の覆面算は、なかなか苦心のあとがあり、3と4と二つの数字がスフィンクスの目のように光っているところに御注目……。 (1)★     4□□  ×   □□ ―――――――    19□□   3□0□ ―――――――   □□0□□ (2)★   □□□□ 5――――― = 9   □□□ 註:―― 1から9までの九種の数字をはめこむこと(5と9とは既に使ってありますね) (3)★       □□□    ______ □□□)□□□□5     742    ――――――     □□□□     1113     ―――――      □□□□      □□□□      ――――         0 (4)★        PXEP    ________ AZH)AZJAJJM     AYG3    ――――――――      AMXJ      AMMZ     ―――――――        4XJ        MMJ       ―――――        AYGM        AYGM       ―――――           0   “虫喰い算”大会 第十五会場  ここが第十五会場です。遠い道路のちょうど半分に当ります。 (1)は小手調べ。(2)は快刀乱麻を断つ――というほどではないが、一度でばらばらと解けてしまいます。(3)は軽く貴下を楽しませてくれるでしょう。(4)は相当骨が折れます。まず三時間はかかりましょう。二時間なら早い方です。半日かかったとか、念入りな人は二日もかかったと申します。(お解きになった後で本書の第一一六頁をごらん下さい、失礼)[#底本で第一一六頁にあるのは、例題七です。] (1)★     □7□  ×   □5 ―――――――    □□9□   1□56 ―――――――   16□□□ (2)★ 9)NNN   ̄ ̄ ̄ ̄    N7 (3)★       BTS    ______ PQA)TSBTS     CQB    ――――――     ASQT     ADQT     ―――――      AQQS      AQQS      ――――         0 (4)★        □7□□□    _________ □□□)□□□□□□□□     □□□□    ―――――――――       □□□       □□□       ――――――       □□□□        □□□       ――――――         □□□□         □□□□         ――――            0   “虫喰い算”大会 第十六会場  第十六会場はこちらです。さあさあお入りなされませ。第十五階選士の皆々さま。 (1)と(2)は軽くパスして、(3)は除数の十位をまず解くことにし、(4)は左右対称なるもの同志を掛けあわせてあるところが面白く、しかもその答たるや敢えて対称でないところに……。  お喋りの虫がまた活気づきました。困りましたね、引込みましょうか。 (1)★     □0□  ×   □6 ―――――――    5□2□   □□□6 ―――――――   4□58□ (2)★ 3A)1B3A    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      B1 (3)★       □□□    ______ A□A)□□A□A     □□6    ――――――      □□□      □□8     ―――――       □□□       □□□      ――――         0 (4)★        ABCBA  ×     ABCBA ――――――――――――        ABCBA       BXZXB      CZGZC     BXZXB    ABCBA ――――――――――――    ANAPJLJXA   “虫喰い算”大会 第十七会場  ここは第十七会場です。  前の会場で、貴下は“第十六階選士にもなるとどうも問題が物足りなくてね”といわれた由。  それはどうもお気の毒さま。前会場は、半道を越えたお疲れ直しのつもりで設計をして置きましたが、さようにお元気ならば、はいはいよろしゅうございます。次に用意いたしました四つの問題、どうぞ御満喫を願います。但し時計の針が、明日の目盛へ進むようなことにならぬとも限らず、目覚時計をかけてから取懸っていただきましょうか。 (1)★    □□E7  −  NNN ―――――――     EEE (2)★        □□□□    ________ 142)123□□□□     □□□□    ――――――――       □□□       □□□       ―――――       100□        □□□       ―――――         □□□         □□□         ―――           0 (3)★       NGDI    _______ TSD)WNITPA     TSD    ―――――――      THTP      TWNN     ――――――       PPNA       NADI      ―――――        TPT (4)★        □□□    _______ □□□)□□□□84      □□□    ―――――――       □□□       6□□       ――――        □3□        □□□        ―――          0   “虫喰い算”大会 第十八会場  お見受けしたところ、おん瞼《まぶた》がだいぶん腫《は》れぼったいですね。いや、どうも口が滑りました。  わが国に於いて“数学パズル”研究の最も熱心なる仁は、大阪に居住される藤村幸三郎氏です。このパズルの神様は、古くからこのことに掛り、そしてそれに関する著書も断然多く、私の記憶するところだけでも三四冊あり、その上にこの数学パズルを応用したゲームの考案もいろいろとあって市販されています。殊に『立体将棋』は傑作中の傑作で、木村名人を大いに呻らせたと申します。 (1)★ 9)□□□□□□   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 6) 3925□ 残り4   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     □□□□ 残り3 (2)[#「(2)」は底本では「(2)★」]  □□□   2 ――――― = ― □□□□   4 註:―― 1から9までの九種の数字をはめこむこと(2と4とは既に使ってありますね) (3)★        IOR    _______ ACR)IDGDRR      ACR    ―――――――      COOR      SEOO      ―――――       UDSR       OOIR       ――――        RID [#「O」は覆面の英字です。] (4)★          □□7□     _________ □□□□)□□9□□□□□      □□□□9     ―――――――――       9□□□□       □□9□□       ―――――――        □□□□9        □□□□9        ――――――         □9□□□         □□□□□         ―――――             0   “虫喰い算”大会 第十九会場  数学パズルは、なぜイギリスだけに盛んなのであるか、面白いことであります。私が序文のところに掲げた五冊の文献洋書は悉《ことごと》くイギリスの刊行にかかります。  アメリカでは、あまりこんな辛気《しんき》くさいものを見かけません。尤《もっと》もアメリカにも全然ないというわけではなく、少しはあることはあるのですが、イギリスのようにアカデミックな風格は備えていません。アメリカではそれより手品や実験の方が、少年達に人気があるようです。  ああ、そうそう。こちらは第十九会場! (1)★ 8)□□□□□   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 7) □□□□ 残り7   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     772 残り4 (2)★  2  1 1―×4―=□  □  5 (3)★       AFBEC    ________ ABC)ATTTAAT     ABC    ――――――――      GFT      GCH      ――――――       CAA       BDF       ―――――        FEA        FAE        ――――         CFT         CFT         ―――           0 (4)[#「(4)」は底本では「(4)★」]        □□□□    ________ □2□)□□2□9□□     □□□□    ――――――――       □□□       □□□       ―――――       □□□□       □□□0       ―――――         □7□         □□□         ―――           0   “虫喰い算”大会 第二十会場  古い日本の書物で、数学パズルの載っていたものがあり、また昔、横浜の南京町で手に入れた中国の数学パズルの本があり、共に大切にしていたのですが、先頃のさわぎでどこへ行ってしまったか分らずなりました[#「分らずなりました」はママ]。甚だ遺憾であります。  おお、ここは第二十会場であります。この会場をパスされれば、全道程の三分の二を通過され、ゴルファなら、これからいよいよシングルへ進むわけです。おっと、おっと、胸をお張りになるのは、本会場の四問題をお解きになってからの方が、ようございます。 (1)★       □A□    ______ □A□)□□□□□     □□□    ――――――     □□BB     □□BA     ―――――      □A□□      □□□□      ――――         0 (2)★        □□□□□    _________ □□□)□□□□□□□□      □□□    ―――――――――        □□□        4□□        ―――――         □□□         3□□         ――――         □□□□         □4□□         ――――            0 (3)★             NINIO       ___________ MARTIN)HARRINGTON        HMGIAN       ―――――――――――          HAOIGT          HMGIAN          ――――――――           MMITLON            LOGATI           ―――――――            MMGGTN [#「O」は覆面の英字です。] (4)★       ADHA    _______ ACC)ATEHBC     ACC    ―――――――      GBH      ECB      ―――――       TEB       TCA       ――――        BAC        ACC        ―――         SW   “虫喰い算”大会 第二十一会場  もう既に見えなければならぬ筈なんですが、一向見えませんが、どうしたものでありましょうか。いいえその、名誉ある第二十階選士たちの姿が、いまだにどうもね。颱風で橋梁《きょうりょう》が流れたためでしょうか、それとももしや途中原子爆弾に……。  序文のところで御紹介しましたバーナード先生は、アボッツホルム学校の助教諭であったマスター・オブ・サイエンスです。  おお、漸《ようや》く見えました。あなたがたは一体どうされたんですか。心配しておりましたよ。なに、ここはどこか? おや、そんなにふうふうですか。ここは第二十一会場ですけれど……。 (1)★     □□7□□  ×    □7□ ―――――――――     □0□7□    □□0□□   7□□0□ ―――――――――   □□□□□□□ (2)★    AM6  ×  MN ――――――    5FN   2DM ――――――   3F2N (3)★        □□□    _______ 523)□□□667     □□□□    ―――――――      □□□6      □□□□      ―――――       □□□7       □□□□       ――――        193 (4)★        DCAM    ________ AEQ)MBDNUQN     MDUE    ――――――――       BQU       AEQ       ―――――       QBDQ       QDCY       ―――――        CNQN        CNQN        ――――           0   “虫喰い算”大会 第二十二会場  こちらが、確かに第二十二会場であります。むつかしくなりましたって。それはそうでしょう。第二十階以上になりますと、うんと頑張っていただかねばなりません。呑気《のんき》に構えていますと、途中で化石になってしまいますよ。といって、あんまりむきになると、目が三角になってしまって、後で癒《なお》すのに骨が折れますよ。  しかしむつかしい問題にぶつかればぶつかるほど、虫喰い算のはかりしれない魅力が感ぜられます。そうではございませんか、第二十一階選士がた。 (1)★      BAAB  ×    ABC ―――――――――     B□□□A    □□□□C   □□□□□ ―――――――――   □□□□□□□ (2)★   2□□□ 96―――― = 100    □□□ 註:―― 1から9までの九種の数字をはめこむこと[#「はめこむこと」は底本では「はめこむと」](9と6と2は、既に使いずみ) (3)★      □7□   ______ □7)□□□7□     □□   ――――――     7□7     □□□     ――――      5□□      5□□      ―――        0 (4)★       RHUCU    ________ HSH)HMHECUT     HSH    ――――――――      MSE      USU      ――――――       CCC       ISI       ―――――       RCRU       RIRI       ―――――         CAT         ISI         ―――         RMC   “虫喰い算”大会 第二十三会場  例のデュウデニー先生ですが、この先生の有名な四つの著書の名を、ここにあげて置きましょう。  第一は『カンタベリー・パズルと、その他の珍らしい問題』。次は『算術遊び』。この本は非常に有名で、日本の雑誌などに使われた数学パズルの種本であります。原名は Amusements in Mathematics です(もしもし、これは覆面算の問題ではありません。鉛筆をおなめになるに及びません)。第三は、The World's Best Word Puzzles。それから第四は本書の序文に出してある『最新のパズルとその解き方』です。  ここは第二十三会場の入口でございます。 (1)★     ABCDE  ×    FBC ―――――――――    AEDFFB   GGFEFA   ABCDE ―――――――――  FHDEETJB (2)      □     □ (□□+□―)=(□□―)      □     □ 註:―― =の左側は奇数 1,3,5,7,9 を,=の右側は偶数 2,4,6,8 をはめこむこと (3)★     EMA   _____ MA)UEMA    MA   ―――――     TM     AS     ―――     EMA     EMA     ―――       0 (4)★          □□□□     _________ 3□□4)□□□□□□□□      □□□96     ―――――――――        □□□□        3□□□        ――――――        □□□□□         □5□2        ――――――         □□□□□         □□□1□         ―――――             0   “虫喰い算”大会 第二十四会場  こちらは第二十四会場でございます。  虫喰い算で忘れてはならないブーン先生のことは前にちょっと申しましたが、この先生はダルウィチ大学の数学の主任の先生であります。  その出版元はミルズ・アンド・ブーン株式会社ですが、このブーンとブーン先生との関係は分っていません。  ブーン先生の名著『パズル・ペーパーズ・イン・アリスメチック』は本当に愛すべき書物でありますが、その巻頭に於ける例題の「解き方」の解説が間違っているのは御愛嬌であります(その書、第九頁)。 (1)★    AB7  − 7BA ――――――    1AB (2)★     □□□□  ×   □□□ ――――――――     9□□□   19□4□  26□□2 ――――――――  □□□5□□□ (3)        □□□    _______ 628)□□□270     □□□□    ―――――――      □□□7      □□□□      ―――――       □□□0        □□□       ――――        482 (4)★       TCCCAZX    __________ MSR)MSRTRABRC     MSR    ――――――――――        TRAB        TZLC        ――――――         STBR         TBZR         ―――――          SMCC          SSBZ          ――――             L   “虫喰い算”大会 第二十五会場  こちらへ、こちらへ。いよいよ第二十五会場です。これをパスすれば、あと僅《わず》か五会場をあますのみ。ほい、そんな下らんことは申すのじゃなかった。  選士がたは、今こそひたむきに、虫喰い算と取組んでおいででしょう。今となっては、虫喰い算に対する礼讃のことばを、私が改まって宣伝する必要もなきまでに、選士のかたがたは、それぞれ夢中で鉛筆の先を嘗めたり、鉛筆のお尻で頭をごしごし掻いたりなされていることでありましょう。  ここをパスなされば、すなわち第二十五階選士です。第二十五階ですぞ。 (1)★    ABC  − CBA ――――――    3BA (2)[#「(2)」は底本では「(2)★」]  □□    □□   1 ―――― = ――― = ―― □□□   □□   3 註:―― 1から9までの九種の数字を□の中へはめること (3)★         QAR     _______ QTAN)QPTZDN      QTAN     ―――――――       DQDD       TNPR       ―――――        XDPN        XDPN        ――――           0 [#第二段の「QPTZDN」は底本では「OPTZDN」] (4)★          □5□     ________ □□□□)□55□□5□      □□5□□     ――――――――       □□□□□       □□□□□       ――――――         □□□□         □□□□         ――――            0   “虫喰い算”大会 第二十六会場  第二十六会場はここであります。  いよいようるさい問題が登場いたします。相当お覚悟あって然るべしであります。  序文に揚げましたる文献に名の出ているアッカーマン氏は、ロンドン大学出の工学士であります。その文献に出ているたくさんの謎々の問題は、イギリスの2LO放送局から放送されたものを集めてあり、虫喰い算と覆面算はたった四題にすぎませんが、他の百ばかりの問題は、数学と科学と工学の各部門に亘り、なかなか面白いものばかりで、氏の解説も頗《すこぶ》る平易です。こういうものが放送される彼の国の放送局と国民を、私は羨《うらや》ましく思います。[#「羨ましく思います。」は底本では「羨まし」] (1)★      □7   _____ 7□)□775    2□□    ――――     □□5     □□5     ―――       0 (2)★   1   1 4――×□―― = 9   □   7 (3)        □□□    _______ □□□)□80□□□      □□□    ―――――――      □□□□      8□□□      ―――――        □□□        □□□        ―――          0 (4)★          CWPSQNGM  ×       MGNQSPWC ―――――――――――――――――         BWBBBBBBC        PBNSBDGQW       SBSCGSCGP      QBBGWMPDS     NCDPMWGBQ    GCGCPGCPN   MCSNDBPQG   CWPSQNGM ―――――――――――――――――  MGDSPDBCDDDGBCSC   “虫喰い算”大会 第二十七会場  虫喰い算の解き方には、いろいろあると、初めに申しておきました。皆さんのような高級選士は、そのあらゆる解き方を探求してごらんになるのが興味深いことでしょう。  これまでにお話して参ったようなシャーロック・ホームズ探偵的な解き方ではなく、その運算書から多元の聯立方程式を得、それからばりばりと解いていく方法もございます。つまり代数的解き方です。  この方が、むしろ正確さと速度に於いて、ホームズ探偵のやり方よりもすぐれていますが、素人的な興味は、やはり名探偵のやり方の方が深いように思います。  こちらは第二十七会場でございます。 (1)★    AB  × BA ―――――   □□1  □1□ ―――――  □□□□ (2)★   □□□□ 94―――― = 100    □□□ 註:―― 1から9までの九種の数字をはめこむこと(9と4は既に使いずみ) (3)★        B□A    _______ A□B)□□□C□□     □□□B    ―――――――      □□BC      □□□□      ―――――       □□□A       □□C□       ――――          0 (4)★        A7□0A    _________ □□□)1□□□□□□□     1□□□    ―――――――――       □□□       □□□       ――――――       100□        9□□       ――――――         □□□□         □□□□         ――――            0   “虫喰い算”大会 第二十八会場  だんだん会場の数が残り少くなって、あますところ僅かに三つ。せいぜい頑張っていただきます。第二十七階の選士がた。  すっかり問題を片づけてしまうと、後はさびしくなってやり切れまい。その後は一体どこに虫喰い算に似た智能的法悦を求めようかと歎かれる選士も――多分少からずあることと思います。敢えてさように察します。  そういう方は、初めからやり直してください。すると、意外にも蒸しかえし的な味は発見されず、やはり新鮮な虫喰い算問題として貴下を愕《おどろ》かすことでしょう。 (1)★    AYM8P  ×   ARZ ――――――――    EGM6A   YPMRK  AYMKP ――――――――  TRTMARA (2)★      B09   ______ AB)□0□□3    3□□    ―――――      A□3      A□3      ―――        0 (3)★      RSR   ______ PR)MTVVR    MVR    ―――――     KKV     KMD     ――――      MVR      MVR      ―――        0 (4)★                   循環小数                 ┌───┴───┐                 ・       ・             □□.□□□□□□□□□□       ___________________ □□□□□□)□□□□□□□        □□□□□□       ―――――――――        □□□□□□□         □□□□□□        ―――――――――         □□□□□□ □         □□□□□□ □         ―――――――――          □□□□□ □□           □□□□ □□          ―――――――――           □□□□ □□□           □□□□ □□□           ―――――――――            □□□ □□□□            □□□ □□□□            ―――――――――             □□ □□□□□             □□ □□□□□             ―――――――――              □ □□□□□□              □ □□□□□□             ―――――――――――――                    □□□□□□                    □□□□□□                   ―――――――                    □□□□□□   “虫喰い算”大会 第二十九会場  ひどい目に遭ったとおっしゃるのですか、前会場で……。それはどうも。何と御挨拶をしたらよろしいやら。  虫喰い算を今まで甘く見過ぎていたといわれるのですか。へえっ、そんなに懲《こ》りましたかね、あの問題に……。  お前はあれをやったことがあるのかとお問いになるのですか。さあ、そのことですよ。実は前から手をつけていますが、いまだに解決がつきませんのです。とうとう曝露しましたね、私がまだ第二十七階選士であって、虫喰い算名人でないということを。  さあさあ、こちらは第二十九会場です。 (1)★      3□   _____ □□)2□□9    23□    ――――     5□9     5□9     ―――       0 (2)[#「(2)」は底本では「(2)★」]   6   1 □――×5―― = □□   7   □ (3)★     XLQAB  ×   AKLB ―――――――――     FHALB    LHFBK  XCBCDK  BBQKC ―――――――――  FFLBQCXB (4)★             □□7□□       ___________ □□□□7□)□□7□□□□□□□        □□□□□□       ―――――――――――        □□□□□7□        □□□□□□□        ――――――――――          □7□□□□          □7□□□□          ――――――――          □□□□□□□          □□□□7□□          ――――――――            □□□□□□            □□□□□□            ――――――                 0   “虫喰い算”大会 第三十会場  いよいよラスト・ホールです。うんと推理の力をふりしぼっていただきましょう。ここさえパスすれば、貴下は虫喰い算の最高級選士となられるのです。  名残りが惜しい。そうですか。もう一度この本を初めから繰返しては……。いやもっと新しい問題、新しい智能的困難にぶつかりたいとおっしゃるのですか。  残念ながら私の手許にあるものは、これまでに全部さし出しまして、後にはもう何も残っていません。  ああ、そうでした。これと似た刺戟をお望みの方は、あの有名なるアメリカの暗号解読者ヤードリ少佐著の『ザ・ブラック・チェンバー』を繙《ひもと》かれんことをお薦めします。  さあ、最終のティーへお立ち下さい。 (1)★    2N1    4N6  + 162 ――――――    829 (2)     □   □ □(□□―+□□―)=100     □   □ 註:―― =の左側は1から9までの九種の数字をはめこむこと (3)★     3Y□□   ______ □X)6□X7Y    □Y   ――――――     XX     7□     ――――     □□7     □□□     ――――       □Y       □Y       ――        0 (4)★       □□□□.□□□□    ____________ □□□)□□□□□□     □□□    ――――――――       □□□       □□□       ―――――        □□□        □□□        ―――――         □□ □         □□ □         ―――――――            □□□□            □□□□           ―――――               0 底本:「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」三一書房    1991(平成3)年10月15日第1版第1刷発行 初出:「“虫喰ひ算”大會」力書房    1946(昭和21)年3月30日初版発行 ※「★」は解答が一つしかないことを示しています。 ※【例題】の解説で、□の中に数字が書き入れられた箇所については、数字のみを入力しました。 ※誤植の疑われる問題「第十会場(1)」は、【例題一】と同一と考えられるため、【例題一】に合わせました。 ※誤植の疑われる問題「第二十五会場(3)」は、「推理学校 虫食い算大会」学生社(1989(平成元)年5月新装版重刷発行)が修正していることを確認しました。 ※誤植の疑われる問題「第十八会場(2)」、「第十九会場(4)」、「第二十五会場(2)」、「第二十九会場(2)」の★印は、「推理学校 虫食い算大会」学生社(1989(平成元)年5月新装版重刷発行)が削除していることを確認しました。また、解が複数個存在することを確認しました。解の個数は、それぞれ「第十八会場(2)」が3個、「第十九会場(4)」が3個、「第二十五会場(2)」が2個、「第二十九会場(2)」が2個です。 入力:田中哲郎 校正:土屋隆 2004年10月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。